秘密法と野党 悪法を補完してどうなる


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 憲法や民主主義の理念に抵触する数々の問題点が指摘されている重要法案の修正を、国民の目に見えない密室で合意するのは国民主権をないがしろにしている。民主政治の在り方として間違っている。

 自民、公明の両党がみんなの党、日本維新の会と合意した特定秘密保護法案の修正案のことだ。与党は週明けにも法案を採決する構えだが、断じて容認できない。
 小手先の修正を繰り返しても、国民の「知る権利」とこれを支える「取材・報道の自由」など、憲法と衝突する法案の本質は何も変わっていない。廃案は免れない。
 政府与党は秘密指定の監視機関の国会設置の検討を付帯決議に盛り込む方向で修正に応じた。しかし、あくまでも「検討」であり、実際には設置されず、空手形となる可能性も否めない。
 漏えいを禁じる「特定秘密」の指定期間を原案の原則30年から「最長60年」とした。半永久的に秘密となる可能性があった当初案を原則60年後に公開する内容に「譲歩」したとするが、公開には数多くの例外項目があり、期間も倍増した。これでは情報公開に逆行しており、修正でなく改悪だ。
 修正合意では5年間指定がない府省庁から指定権限をいったん奪うことを盛り込んだが、無意味だ。省庁が既得権益を放棄するわけがない。秘密指定の権限を死守するため、必要もない情報まで特定秘密に指定し、秘密情報の肥大化を招くのは目に見えている。
 「特定秘密」の指定に関する首相の「指揮監督権」の明記も提示したが、首相に膨大な数の特定秘密をチェックできるはずがない。首相が閣僚、官僚らによる恣意(しい)的な秘密指定を具体的に防げると説明すること自体、詐欺的だ。
 委員会で徹底論戦を挑むことなく、“場外”で与党にすり寄った、みんなの党と日本維新の姿勢には失望する。健全野党の気概はないのか。与党の補完勢力に堕落したと批判されても仕方がない。
 先月末の全国世論調査では法案反対が過半数を超え、慎重審議を求める意見は82・7%を占めた。市民グループや学者・文化人が呼び掛けた21日の東京での法案反対集会には約1万人が参加した。反対世論が大きなうねりを見せつつある。世論を無視し、法案成立に突き進むことは民主主義の破壊行為だ。繰り返すが、国会はこの悪法を廃案にすべきだ。