従来とは様相を異にする画期的な調査だ。県が2012年秋に実施した県民意識調査の結果がまとまった。興味深い県民意識や価値観が幾つも浮き彫りになっている。この調査結果は、県の今後の施策に生かすべきだ。
調査は、従来、5年に1回行ってきた「県民選好度調査」を引き継ぐものだ。だが手法と項目を一新した。県民の意識や価値観を浮き立たせる項目の設け方を評価する。
画期的なのは「沖縄への米軍基地の集中を差別的と思うか」と問うた点だ。従来なかった設問で、その結果、県民の74%が差別的と感じていることが分かった。
数年前なら回答は一桁にとどまったのではないか。県民意識が分水嶺を越えたことを示している。この問題は、「足して2で割る」形では解決できない。「差別が半分程度ならいい」と思う人はいないからだ。基地の集中への対応として、県内の別の場所に移すような中途半端な方法では、解決になどならないことを示していよう。
注目すべきはほかにもある。10年前に比べ「経済格差が広がった」という見方は34%で、「縮まった」はわずか5%だ。人と人のつながりも、10年前に比べ「弱まった」が44%、「強まった」は6%だ。
格差は治安悪化や人心の荒廃につながりかねない。調査結果は、富裕層をより富ませ弱者を痛めつける「弱肉強食」の新自由主義的政策への警鐘と見るべきだ。人と人のつながり、すなわちコミュニティーの再生・創出が喫緊の課題であることも示している。
県民の自己像を問うたのも特徴だ。その結果、調査は「ウチナーンチュの自己確認意識が目覚めた。2012年は『沖縄アイデンティティー』の覚醒の年」と総括した。正鵠(せいこく)を射た総括と言えよう。
「県民総幸福度」を設定し、幸福度と生活指標との相関関係を探った視点も斬新だった。的確な分析を経て施策展開に活用すべきだ。
ただ、県は県庁職員に配布しただけで、いまだに県民向けに公表していない。従来と同じペースなら昨年6月には公表したはずだ。遅すぎる。
基地集中を差別と見る県民意識と、大きな乖離(かいり)がある知事の埋め立て承認があったから公表を遅らせた、と見るのはうがちすぎか。いずれにせよ、税金を投じた調査である。県は早急に県民に対し全容を公表すべきだ。