日米外交密約を否定して国民や国会を欺いてきた歴代首相と外務省の行為は犯罪的であり、厳しく断罪されなければならない。
安倍晋三首相が国会答弁で、過去の核持ち込みに関する密約を歴代自民党政権が隠し続けたことを「間違い」と認めた一件のことだ。
民主党政権時に外相として密約調査を主導した岡田克也氏が、1960年の日米安保条約改定時に米核搭載艦船の通過・寄港を事前協議の対象外とした「核持ち込み」密約を例に、歴代内閣が「密約はない」との答弁を繰り返してきたことを問題視し、質問した。
安倍首相は今回の答弁で、密約の存在を否定する虚偽答弁の歴史にけじめを付けたつもりだろう。
しかし「間違い」では済まない。うそで塗り固めた密約外交の事実は、国民主権や国権の最高機関である国会をないがしろにするものだ。安倍首相は、歴代自民党政権の不作為を国民に誠意を尽くして謝罪しなければならない。
外交当局の責任を追及し、明確にするのは国会の責務だ。密約外交の経過・実態の調査委員会を設置し、国内への核持ち込みの有無を含めて徹底的に検証すべきだ。
首相はまた、国会答弁で「有事の際に航空機が不時着し、運搬中の文書が奪取される恐れがある場合は、奪取されないように破棄しなければいけない」と述べた。
特定秘密保護法に関連し、秘密指定文書を緊急時には法が定める指定解除手続きを踏まずに廃棄する可能性があるとの認識を示したものだ。この認識は非常に危うい。
不時着時という例示は一見、説得力があるように見える。しかし「緊急時」を政府が恣意(しい)的に解釈し、国民や国会の目に触れたら問題になりそうな失態を隠すために指定文書を破棄することも容易となろう。「緊急時」という適用除外は結局、国民の「知る権利」を狭めることにしかなるまい。
米軍関連情報が過剰に「特定秘密」に指定され、基地の監視が難しくなるとの懸念も各方面から出ている。適用除外の拡大で国民が知りたい情報は闇から闇へと葬られかねない。主権者の国民を欺く外交は過去も現在も許されない。
国民は秘密法を是認していない。憲法や民主主義を破壊する悪法との批判も絶えない。秘密法を廃止し、秘密指定や情報公開の在り方について議論をやり直すべきだ。