公室長訪米 沖縄の尊厳を訴えたか


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 誰の命令で何のためにワシントンを訪れたのか。沖縄の尊厳を守るための訪米なのか。県の公金支出の在り方として適切なのか。強い疑念を禁じ得ない。

 県の又吉進知事公室長はワシントンで国務省のナッパー日本部長らと会談し、米軍普天間飛行場の5年以内の運用停止など4項目の負担軽減策の実現を求めた。
 案の定、ナッパー氏らは負担軽減については具体的に回答せず、仲井真弘多知事による名護市辺野古の埋め立て承認を「評価する」と答えた。知事は承認後も県外移設の公約は変えていないと強弁するが、詭弁(きべん)でしかないのは誰の目にも明らかだ。論理性を重んじる米国ならば、なおさらそう受け止めるはずだ。
 県はこれまで、埋め立て承認について「法律上の要件を満たしている」と行政手続き上の判断としてきた。しかしながら、県の審査では「普天間の危険性除去が喫緊の課題で、移設先の確保という点から合理性が認められる」と判断していたことが、本紙の情報公開請求で明らかになった。これは県が政府の移設計画に同調し、承認にあたって政治判断を加味していたことを示す動かぬ証拠だ。
 日本政府は、名護市長選で移設に反対する稲嶺進市長が再選されたにもかかわらず、知事の承認を理由に、辺野古移設を強行する姿勢を変えていない。承認を“錦の御旗”とするのは、辺野古埋め立てに、知事が合理的とお墨付きを与えていたからにほかならない。
 訪米した公室長は、県議会の知事に対する辞任要求決議や稲嶺市長の再選など、県内の政治情勢を客観的に説明し、辺野古移設について「県は楽観視していない」と伝えたという。ナッパー氏らもさぞ困惑したことだろう。
 又吉氏はこれまでに幾度も訪米し、県外移設を求める県の姿勢を伝えてきた。日本政府が沖縄の民意を無視し続けるため、独自の対米交渉に踏み切るしかなかったからだ。昨年9月の訪米では「米国内で県が容認するという楽観論が広がっている。県外移設が早いという県の立場は変わっていない」と述べていた。
 今回の訪米は、埋め立て承認について移設容認ではないと釈明するためだったのか。詭弁を重ねる前に県民や名護市民の民意を踏まえ、埋め立て承認を撤回するのが先だ。民意を代弁しない訪米にどれだけ意味があるのか甚だ疑問だ。

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