暗闇に乗じて、新たな米軍基地の負担を拒む非暴力の運動の拠点を破壊する卑劣な行為に愕然(がくぜん)とさせられる。
名護市辺野古沖への新基地建設反対を訴える市民が座り込みを続けるヘリ基地反対協議会のテントが、荒らされた。大浦湾と辺野古沖の豊かな自然を映し出すパネルがはがされ、修学旅行生などが贈った折り鶴も引きちぎられた。
テントが襲われたのは、2004年の座り込み開始から10年余で初めてのことだ。 安倍政権は7月にも新基地建設に向けた辺野古沖の埋め立てに向けた海底掘削調査を始める構えだ。調査開始をにらんだ何者かによる嫌がらせ、威圧の可能性もある。
いずれにしても、表現、言論の自由を暴力で踏みにじろうとする許し難い行為である。
ヘリ基地反対協は暴力には屈しないと表明し、警察に被害届を出す方針だ。県警は容疑者特定を急ぎ、政治的・思想的背景も含めて、真相を徹底解明してほしい。
辺野古漁港近くのテントには、レンタカーで訪れる観光客も含め、県内外から多くの人が訪れる。反対運動の拠点にとどまらず、辺野古新基地問題の実像や、沖縄の民意の深層に触れることができる貴重な学びの場にもなっている。
座り込むメンバーは、基地建設を容認する人が訪れても根気強く丁寧にデータを添えて説明し、理解を求めている。
昨年夏に初来沖したアカデミー賞受賞監督のオリバー・ストーン氏も、辺野古沖、大浦湾の豊かな海を船上とテントのパネル写真などで確認し、「この美しい海を絶対に埋め立ててはいけない」と強調していた。俳優の菅原文太さんは来県時に必ず訪れ、沖縄に横たわる不条理を本土に発信している。
平和学習の一環としてテントを訪れた児童・生徒から送られた折り鶴には、豊かな自然を守り、平和を願う思いが添えられている。
辺野古新基地を造らせない運動の軸足は徹底した非暴力にある。今回の破壊行為はその対極にある。
最近、新基地建設にあらがう県民を毛嫌いし、「日本の安全のために犠牲になれ」と露骨に主張する勢力がインターネット上で確認できる。一部は、テントに押し寄せて拡声器で侮蔑的な言葉をがなり立てたこともある。私たちは暴力で沖縄の民意を抑え込もうとする行為に断固として反対する。