「解釈改憲」議会決議 法治国家擁護へ強い意志を


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 安倍晋三首相が閣議決定による憲法解釈変更で集団的自衛権の行使容認を目指していることについて、那覇市議会が首相や衆参両院議長などに宛てて慎重審議を求める意見書を賛成多数で可決した。

 意見書は、国の安全保障政策の大転換を国民的な議論も経ずに、なし崩し的に閣議決定を急ぐ安倍政権の姿勢を批判している。
 集団的自衛権の行使を憲法解釈で禁じてきた歴代政権の立場や、20万人余の尊い命が犠牲となった沖縄戦の教訓、米軍絡みの事件事故、人権侵害が後を絶たない沖縄の現実などを踏まえれば、意見書の趣旨は十分理解できる。反対ではなく慎重審議とした点は踏み込み不足の感も否めないが、意思表示自体は率直に評価したい。
 これに先立ち県内で初めて18日に解釈改憲反対の意見書を可決した読谷村議会は、一内閣の一存で憲法解釈変更を行い集団的自衛権の行使に進むことを「断じて許されない」と批判。北中城村議会は集団的自衛権行使によって多大な影響を受けるのは尖閣諸島のある沖縄県だとし、全国で公聴会を開き国民論議を尽くすよう求めた。
 5月中旬の共同通信社の全国世論調査では、憲法改正によらず解釈変更によって行使を認める考えに反対との回答は51・3%に上った。国民の抵抗感は根強く「戦争できる国」への転換を国民が望んでいるとは到底言えない。
 歴代政権が憲法99条の憲法尊重擁護義務に反して長年憲法を空洞化させてきたこと自体、本来はあってはならず、罪深いことだ。さらに集団的自衛権の行使を禁じてきた政府の憲法解釈を閣議決定で180度変更するのなら、この国はもはや法治国家とは言えない。
 全国の地方議会でも首相や国会などに反対や慎重審議を求める意見書の決議が相次いでいる。法治国家の一翼を担う市町村議会には住民の生命、財産を守り、社会正義を貫く立場から政権の暴走への明確な意思表示を期待したい。
 国民の「知る権利」や報道の自由を制限する国家秘密保護法制定、武器輸出三原則の撤廃、専守防衛の国是の見直しなどによって、戦争を放棄した憲法9条も平和国家日本も風前のともしびだ。繰り返すが、こうした中、市町村議会は地域住民の声を十分吸い上げながら、議会の意思を示すことを決してためらってはいけない。