<社説>辺野古工事変更 アセス制度否定に等しい


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 無理に無理を重ね、法の趣旨を逸脱してまで新たな基地の建設を急ぐ姿勢が露骨に表れている。

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画をめぐり、沖縄防衛局が県に申請している工事の設計概要の変更で、重大な事実が明らかになった。
 名護市辺野古のキャンプ・シュワブ内にある美謝川の河口が埋め立てに伴って地下水路に切り替えられるが、その区域が当初計画の240メートルから1022メートルに延びた。
 地下に水路(暗渠(あんきょ))を築く距離は4倍以上になっており、環境への負荷が高まるのは確実だ。
 これだけ大きな変更は全く別物の計画と捉えていいだろう。法手続き上も、環境保護の観点からも問題が多過ぎる。
 環境アセスメント学会の重鎮である桜井国俊沖縄大名誉教授は「今までの環境影響評価(アセス)は全く無効になる」と批判する。
 防衛局の変更申請には、新基地建設に反対する名護市に管理権がある地区を避けて工事を急ぐ「名護市外し」のいびつな政治的側面も照らし出されている。
 さらに、魚類に詳しい琉球大理学部の立原一憲准教授は、淡水の美謝川と大浦湾を行き来する両側回遊魚が河川を上らなくなる可能性が高まり、魚種や個体数の減少は不可避と指摘している。
 要するに魚が生きられなくなるということである。
 「後出しじゃんけん」と指摘せざるを得ない大幅な計画変更は、最低限の民主的手続きを踏まえず、科学性を欠いている。環境アセスをやり直さないのであれば、アセス制度を否定するに等しい。
 防衛局の環境アセス評価書で示した当初案は、6案の中で地下水路が最短で、環境への負荷が「最も少ない」とされていた。それでも県は「自然豊かな多様性の創出が十分できるとは言い難い」として再検討するよう求めていた。
 にもかかわらず、今回、沖縄防衛局は地下水路の大幅延長という挙に出た。美謝川河口沖合の藻場、サンゴ礁に連なる豊かな生態系の保全への懸念も強まっている。
 仲井真弘多知事による埋め立て承認の判断は下されていても、県は環境への負荷が強まる変更申請に対して厳しく臨むべきだ。科学性を十分に担保した審査を尽くし、県民が納得する判断を示してもらいたい。