<社説>マグロ絶滅危惧 資源管理で日本の責務重大


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 国際自然保護連合(IUCN)は、太平洋のクロマグロとアメリカウナギなどを新たに絶滅危惧種に指定した最新のレッドリストを公表した。いずれも日本の市場目当ての乱獲が一因だと指摘されており、日本の責任は重い。

 マグロとウナギの大量消費国である日本に対し、国際社会が厳しい目を向けている表れだ。2016年のワシントン条約の締約国会議で、両種を輸出入の規制対象に加えるよう求める声も上がるなど、今後予想される状況はより厳しい。日本には資源管理を主導する使命と責務があることをあらためて確認したい。
 日本はクロマグロの全漁獲量の8割超を消費し、かつ7割を漁獲する魚食大国だ。太平洋の親魚の資源量は1961年に約14万トンだったが、2012年は2・6万トン程度まで激減した。また、ニホンウナギの減少でアメリカウナギの需要が高まり、米国内で密漁が激しくなっている。日本が資源管理を怠ってきたツケが、こうした事態を招いたと言っても過言ではない。
 太平洋クロマグロについてはことし9月、中西部太平洋まぐろ類委員会で、日本近海を含む海域での漁獲規制を強化することで関係国が大筋合意した。日本の提案に基づき、30キロ未満の未成魚の漁獲量を02~04年に比べて15年から半減する内容だ。東部地区でも15、16年の年間漁獲量の上限をそれぞれ3300トンとする規制強化策が講じられることが決まった。
 水産庁は、こうした保全策などから国際取引の規制は当面、見送られる公算が高いとみているが、楽観は禁物だろう。大西洋では漁獲サイズ規制や産卵場での漁獲制限、総漁獲量の8割削減など厳しい措置の結果、ここ数年、急速に資源が回復しているが、太平洋では漁獲サイズ規制と産卵場での漁獲規制は提案さえされなかった。
 ウナギの保護は、さらに手付かずだ。日本はニホンウナギについてことし9月、中国や韓国、台湾などと協力して稚魚のシラスウナギの漁獲量を削減することで合意したが、生態が謎に包まれたウナギは科学的なデータが乏しく、規制の効果は未知数だからだ。
 今後、マグロとウナギの保護で追加的な措置を求められる可能性は否定できない。既に合意した規制措置を厳格に順守することはもとより、資源管理の国際的な枠組みの拡大強化が急がれる。