<社説>軽減税率 再増税待たず実施せよ


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 自民、公明両党は消費税の軽減税率制度について「2017年度からの導入を目指す」ことで正式合意した。

 消費税は低所得者ほど負担が大きくなる逆進性が指摘される。負担緩和措置は不可欠といえよう。安倍晋三首相が表明した17年の消費税10%引き上げを待たずに直ちに実施すべきだ。
 安倍政権による4月の消費税8%増税は家計を直撃している。
 9月の県内の1世帯(2人以上)当たり実質消費支出は、前年同月比18・2%減となった。増税以来6カ月連続の減少だ。勤労者世帯の実収入は対前年同月比9・0%減少した。物価は上がるが収入は減る。このため家計に余裕がなくなり買い控えが広がっている現状が浮かび上がる。
 加えてアベノミクスによる円安で輸入価格が上昇し、食料品やガソリン価格が高騰している。家計にとってダブルパンチだ。
 主に低所得者対策として英国やフランス、カナダなどは、食料品など生活必需品の消費税率を低く抑えて、家計の負担を軽くしている。これらの国の仕組みを参考にしたい。
 本来なら消費税を実施する時から、軽減税率を導入すべきだった。しかし、日本は制度導入に伴う税収減や、対象品目の線引きの難しさ、小売店などの経理が複雑になり事務負担が増大することなどを理由に見送られてきた。
 今回の軽減税率導入に関する自公合意で、公明党税制調査会の斉藤鉄夫会長が来年4月から導入すると述べたのに対し、自民党税調の野田毅会長は「(4月に)間に合うようにやるとも読める」と曖昧に説明し、解釈の違いが浮かび上がっている。
 危機的な財政状況の中で、増え続ける社会保障費を捻出するための安定財源として消費税が導入された。しかし、消費税を引き上げると、低所得者の負担は増し、富裕層との格差は広がるばかりだ。国民の理解を得るためにも軽減税率の導入を急ぐべきだ。
 消費税増税で家計負担が増大したにもかかわらず、安倍政権は来年度から法人税の実効税率を引き下げる。企業優先の経済政策だ。
 衆院選で自公は軽減税率導入を衆院選の共通公約に盛り込む方針だ。人気取りに終わらせずしっかり争点化したい。