<社説>警官の強制排除 県民の信頼失いかねない


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 県知事選で県民の意思がはっきり示されたにもかかわらず、国は米軍普天間飛行場の返還に伴う名護市辺野古の新基地建設を力ずくで推し進めようとする。

 キャンプ・シュワブのゲート前で体を張って抗議する住民の両脇を抱え、強制排除し、連日、けが人が出た。
 その様子を撮影していた記者や映画監督も取材を妨害された。
 民主主義にもとる新基地建設で、国の手先となって強制排除を行っているのが沖縄県警だ。
 そもそも住民を守るはずの公僕が、住民の正当な抗議活動を抑え込むことは断じて許されない。
 沖縄防衛局は知事選から3日後に工事を再開した。「辺野古移設」の是非を最大の争点とした知事選で、移設に反対する翁長雄志氏が、埋め立てを承認した現職の仲井真弘多氏に10万票差をつけ圧勝した。
 住民の意思に反し、国が力ずくで基地を押し付けることなど沖縄以外には日本のどこでもできないはずだ。
 明治政府は1879年、「琉球処分(琉球併合)」を断行し、琉球を日本の版図に組み込んだ。それから間もない写真が、ことし5月見つかった。首里城の前で銃剣を装着した銃を手に整列した明治政府軍は、琉球処分の象徴に映る。
 子や孫、未来のため、自らの誇りのために県民は「辺野古移設反対」を選択した。基地建設を強行する国に対し住民は体を張って抗議するが、同じ県民がそれを排除する構図というのが何ともむなしい。
 地元の人間同士をいがみ合わせ、東京で高みの見物を決め込む国の姿勢は、植民地支配にも似ている。
 ゲート前には「泥よけ」のためと称し、山型突起付きの鉄板が敷いてある。強制排除でけがをする恐れは十分予測できる。それを無視して強制排除するのは理解できない。
 取材妨害は言語道断だ。住民の抗議活動を伝えるのが報道機関の役割だ。見られたら何か不都合なことでもあるのか。県警は「安全確保の観点」からと説明するが、取材妨害以外の何物でもない。「安全確保」と言うなら、あの鉄板を撤去する方がよっぽど安全確保になる。
 交通安全、防犯など市民の安全を守るため一緒に活動し、営々と築き上げてきた県民の信頼を失いかねないと、県警に忠告したい。