<社説>海上作業中断 民意直視し移設計画撤回を


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 辺野古の海上作業が突然中断された。民意を直視すれば、選挙後も作業を再開すべきではない。

 米軍普天間飛行場の移設に向けた名護市辺野古沖の作業で沖縄防衛局や海上保安庁は22日、キャンプ・シュワブ沿岸部の浮桟橋やゴムボートを撤去した。浮桟橋は19日に再設置したばかりだった。
 浮桟橋は、海上ボーリング調査の再開に向け、施工区域を示すフロート(浮具)を再設置する作業などで利用するものだ。防衛局は撤去の詳しい理由を明らかにしていないが、16日の県知事選前も作業は中断していた。今回も、来月14日の実施が急きょ決まった総選挙への影響を考慮したのではないか。
 県内移設への県民の反対が根強いから、選挙までは作業を控えよう-という姑息(こそく)な判断が政府・与党サイドにあるとするなら、それこそ有権者をばかにしている。
 安倍政権が今なすべきは、移設反対候補が移設推進の現職を大差で破った知事選の結果を真摯(しんし)に受け止め、総選挙のあるなしにかかわらず作業を止めることだ。安倍晋三首相はこの期に及んでも辺野古移設が「唯一の解決策」と繰り返している。その硬直した思考を改め、事態打開へ米国と新たな解決策を真剣に模索すべきだ。
 辺野古の海上作業では、埋め立て予定地内に計画されている「仮設桟橋」の整備に向けた砕石の設置が始まる方向となっていた。網に入れた石の塊を海上に積み上げる工法であり、これまで指摘した通り埋め立てに等しい工事だ。
 環境影響評価書や昨年末に仲井真弘多知事が承認した埋め立て承認申請にも記載がなく、7月に県が提出した岩礁破砕申請書では同じ場所に「仮設岸壁」を整備するとある。防衛省関係者は設置後も撤去せずそのまま埋め立てることも否定していなかったが、防衛局は県に21日「使用後に撤去する」と伝えた。
 仮設桟橋について県は「撤去しない場合は変更申請が必要」としていた。移設に反対する翁長雄志氏の知事就任を見据え、政府は撤去の方針に変更したのか。移設作業では不明な点が多過ぎる。政府が最低限の説明責任も果たしていないからだ。
 総選挙では辺野古の是非が再び争点となる。審判が下るまで作業を中止するのは当然だが、この国が民主主義であるなら、知事選の結果を受け止めて移設計画そのものを速やかに撤回すべきである。