<社説>不発の定数削減 身を切る改革の具体像示せ


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 衆議院の抜本的な定数削減が実現しないまま、解散・総選挙になだれ込んだ。まず、政治不信を強める愚行と指摘しておきたい。

 自民、公明、民主の与野党3党は「消費増税で国民に負担増を求める以上、議員自らも身を削る必要がある」と約束していたはずだ。
 2012年12月の前回衆院選前の論戦を振り返ろう。
 安倍晋三自民党総裁(当時)から衆院解散を求められた野田佳彦首相(当時)はその引き換えに「必ず次の国会で定数削減する。責任を負うと約束せよ」と迫った。安倍氏は「来年(13年)の通常国会でしっかりやる」と確約し、民主、自民、公明3党は議員定数削減を含む選挙制度の抜本改革で合意した。
 だが、その後の衆院選で自公両党が大勝した途端、与野党の協議は暗礁に乗り上げ、「身を切る改革」の核心である議員定数削減は置き去りにされた。
 選挙制度改革の実現まで継続するはずだった議員歳費の削減は消費税率を8%に引き上げた4月で幕引きとなった。多くの国民がだまされたと感じているだろう。
 自民党は党内の意見集約さえできないまま、ことし9月に、伊吹文明衆院議長が設けた第三者機関に丸投げする形で検討を委ねた。
 設置は遅過ぎたし、その権限にも課題がある。答申しても法的拘束力がなく、定数削減が実現する保証はないのである。
 安倍首相はこの間、「国会、政党間の問題」と、人ごとのような態度で指導力を発揮しなかった。「身を切る改革」を果たさず、衆院解散に打って出た首相の責任はとりわけ重い。
 3党合意の当事者だった民主党など、野党側もどれだけ一致点を見いだす議論を深めたのか、取り組みが弱過ぎたのではないか。
 「1票の格差」是正も不発のままである。前回衆院選をめぐり、最高裁大法廷は13年11月、最大2・43倍の格差があった小選挙区の区割りを違憲状態とし、政治の怠慢を批判した。国会は定数を0増5減にし、違憲状態選挙区の格差を2倍未満に抑えたが、今回の衆院選で格差が2倍以上になる選挙区が新たに出ることは避けられない。
 定数削減と1票の格差是正をどう実現するのか。各党は衆院選で具体的な公約を掲げ、絶対にそれを破らないと国民に約束し、審判を受けるべきだ。