<社説>イラン核交渉延長 粘り強い交渉で解決せよ


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 イラン核問題の包括解決を目指す欧米など6カ国とイランの協議は、最終合意に至らなかった。最終的な交渉期限を約7カ月再延長することでひとまず合意した。

 決裂を回避したことで交渉継続に望みをつないだが、最終合意への道のりは険しい。
 ケリー米国務長官は「問題は複雑」と述べたが、核不拡散の取り組みを水泡に帰してはならない。時間をかけても最終合意の実現に全力を尽くすべきだ。
 イランの核開発計画は2002年に発覚した。核問題の包括解決に向け、欧米6カ国とイランは昨年11月に第1段階の措置(共同行動計画)で暫定合意した。イランがウラン濃縮活動を制限し、欧米は対イラン制裁の一部を解除した。
 双方は時間と労力をかけて約1年間にわたって協議を続けたが、今回再延長せざるを得なかった。問題は深刻といえる。
 6カ国側はイランによるウラン濃縮活動の一部継続を最終的に認める見通しだ。これ以上のイランの核開発の潜在能力を抑える狙いがある。イランは濃縮活動を認めさせる好機と捉える。
 しかし、イランのウラン濃縮を容認すれば逆に中東諸国を警戒させてしまう。イランと覇権を争うサウジアラビアは、対抗して自国のウラン濃縮の権利を主張する構えを示唆した。
 イランを安全保障上の最大の脅威と位置付けるイスラエルも警戒を強めている。ネタニヤフ首相はイランが核兵器の開発能力を持つことを防ぐために「闘い続ける」と訴える。
 6カ国側の交渉姿勢は、他の中東諸国がイランに対抗して核開発に乗り出す「核ドミノ」を招きかねないジレンマに陥っている。
 さらに米国内は、中間選挙で上下院を制した共和党がイランへの制裁を強化し圧力を強める必要性を主張している。今後、交渉に介入する動きが本格化するとみられる。イラン国内も交渉に否定的な保守派を抱えており、安易な妥協は許されない状況だ。
 イランの核関連施設での監視・検証措置のやり方も隔たりがある。
 交渉に「進展があった」と主張する米国とイランの主張は無理がある印象を受ける。オバマ大統領が提唱するように「核なき世界」を目指し、粘り強く交渉することを強く望む。