<社説>女性登用 潜在成長力発揮に不可欠


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 政府が鳴り物入りで国会に提出した女性活躍推進法案が衆院解散で廃案になった。経過を見ると、本気で成立させたかったのか、政権の意思が疑われても仕方がない。

 だが政権の思惑がどうであれ、女性登用に後ろ向きでは社会が立ち行かないのは明らかだ。国を挙げた取り組みが求められる。
 法案は企業や行政に女性登用を促すのが狙いだ。数値目標の義務化に経済界が難色を示し、政府は一時、数値設定見送りに傾いたが、数値の幅や目標の対象を企業が自由に選べる形にした。10月末に審議入りし、野党も賛成の方向で成立はほぼ確実だったが、解散風が吹き出すと政府はあっさりと成立を断念した。
 安倍晋三首相は「野党の協力が得られず廃案となった」と主張するが、成立より解散を優先したのは明らかだ。労働政策審議会の委員は「もう少し解散時期を遅らせれば成立できた。女性をパフォーマンスに使っただけで、信念はなかったのだろう」と非難する。政権の姿勢は批判を免れまい。
 政府は「2020年に指導的地位に占める女性の割合を30%にする」との目標を掲げる。だが足元の各省庁の女性管理職比率は3・0%にすぎない。知事の一人が述べたように「政府自身が達成不可能な目標を自治体や企業に示している」のは無責任過ぎる。
 これで民間や自治体に登用を促せるはずがない。達成可能な目標を設定して必ず実現する姿勢を示すべきだ。一方で、低い目標で甘んじると誤解させてはならない。目標年次を20年にとどめず、その先も明示し、登用に不退転の姿勢をきちんと示してもらいたい。
 地方も登用は進んでいない。都道府県庁の平均は6・8%にすぎず、20年の目標も7~20%と政府方針に遠く及ばない。沖縄も6・1%だ。適正な配置や研修の実施など、積極的な対策が求められる。
 管理職に占める女性の割合で日本は公務員を含めても11・9%と欧米の3~4割を大幅に下回る。国会議員の割合は世界190カ国中163位だ。
 男女の賃金格差も経済協力開発機構(OECD)加盟国平均の2倍以上だ。女性を低い地位に押しとどめる国である限り、行政も企業も、発想や価値観が偏るのは明らかだ。人権の面だけでなく、社会が潜在的な成長力を発揮する上でも女性登用は不可欠だ。その意義を深く認識したい。