<社説>性暴力被害者支援 病院拠点型移行を早急に


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 性暴力に遭った被害者の相談や治療、告訴の手助けなど必要な支援を1カ所で行う「ワンストップ支援センター」について、県は来年1月の開設を目指している。だが、当初予定の「病院拠点型」は見送る方針であることが分かった。

 当面は相談センターを設置し、複数の協力病院など関係機関と被害者をつなぐ「連携型」となる方向だ。センターは「24時間、365日対応」が望ましいが、24時間運営も現段階では不透明な状況という。
 被害者の“駆け込み寺”となるセンターの設置は急がなければならず、遅延は許されない。医師不足など「連携型」を余儀なくされる理由は理解できるが、あくまでも「病院拠点型」移行に向けた緊急避難措置と受け止めたい。県と関係機関は一日も早い病院拠点型移行に向け、努力を続けてほしい。
 被害者が誰にも打ち明けられず、一人で苦しむ性暴力は「魂の殺人」とも呼ばれる。心身に深い傷を負った被害者に寄り添い、治療や心のケアなど必要な措置を1カ所で行うワンストップ支援センターの設置が急がれるゆえんだ。
 全都道府県への設置を目指す内閣府は2012年5月、センター開設・運営の手引を作成している。センターの形態として、病院内に設置する「病院拠点型」、病院の近くに配置する「相談センター拠点型」のほか、次善の策として「連携型」を掲げている。
 連携型では、複数の機関へ被害者をつないだり、病院から連絡を受けて対応したりするなどワンストップ機能を果たせない恐れがあるためだ。病院型などに比べ、被害者をはじめ、相談員やセンターの負担が大きくなる懸念もある。
 元来、センターの役割は、相談先で配慮を欠いた対応をされて精神的に傷つく二次被害を防ぎ、被害者の負担を軽減することにある。求められる機能は(1)被害者に寄り添い、専門知識で相談に応じるなど必要な支援のコーディネート(2)緊急避妊薬、性感染症治療などの救急医療や証拠採取-などだ。性暴力被害はいつ発生するか分からず、とりわけ病院の迅速なケアは必要不可欠だ。
 そもそも全国的にセンター設置が遅れているのは、国が自治体任せで必要な財政支援をしていないからだ。安倍晋三首相は、女性政策重視を掲げるのならば、センターの設立支援策についても積極的に取り組むべきだ。