<社説>参院「違憲状態」 もはや猶予はならない


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 人によって4票を持つ場合と1票しかない場合がある。そんな不平等は、民主主義に照らしても、人道上も、許されない。

 2013年参院選の「1票の格差」をめぐる全国訴訟の上告審で、最高裁は「違憲状態」との判断を示した。選挙無効の請求を退け、違憲の判断も避けたことで、国会の中には安堵(あんど)する向きもある。だが抜本的に是正しなければ次は違憲判決、という最後通告と受け止めるべきだ。
 13年参院選で、選挙区の有権者数は鳥取が最小、北海道が最大だった。格差は4・77倍だ。10年参院選は最大5倍であり、その間、「4増4減」という急場の弥縫(びほう)策でわずかに改善されたにすぎない。
 裁判所は判決を重ねるごとに是正要求の姿勢を強めてきた。07年参院選をめぐる最高裁判決は、選挙を合憲としながらも「選挙制度の仕組みの見直しが必要」と言及した。前回は「現行制度で平等実現は不可能」とまで言い切った。
 12年衆院選をめぐっては、5カ所の高裁が従来の「違憲状態」から一歩踏み出して「違憲」と断じ、広島高裁は「違憲であり、選挙は無効」とまで踏み込んだ。その上、今回の上告審では、15裁判官のうちの1人とはいえ、最高裁の場で初めて「無効」との意見表明があった。司法の忍耐は限界を超えつつあると見た方がいい。
 もはや猶予はならない。国会は速やかに抜本改革案を得るべきだ。
 参院は3年おきに半数を改選するから、必然的に1県で2人以上の議員がいる。最少の区を基に人口比例ではじき出すと、選挙区だけで議員数は440人以上になる。現在の定数が242だから、比例を含めると倍以上になるのは確実だ。国会の定数削減が論議される中、理解は得られないだろう。
 選挙区の単位を都道府県からブロックに改めるか、半数改選でなく全数改選にするか。比例のみにするか、あるいは定数を増やす代わりに議員の報酬を半分以下にするか。いっそ一院制にするか。あらゆるタブーを排して論議する必要がある。
 しかし国会の論議は党利党略が入り乱れ、遅々として進まない。各党間の擦り合わせはおろか、自民党内ですら一本化を諦めたような現状は目に余る。国会に身を切る覚悟は無いと見られても仕方ない。第三者機関に委ね、成案をつくることも選択肢に入れていい。いずれにせよ先送りは論外だ。