<社説>水路変更取り下げ 仲井真氏に判断資格なし


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 沖縄防衛局は米軍普天間飛行場の名護市辺野古沖への移設計画で9月上旬に県に提出していた埋め立て工事の変更申請4件のうち、移設先に流れる美謝川の水路切り替えルートの変更の1件を取り下げた。県の審査終了を待たずに3カ月弱で申請を取り下げたことは非常に不可解だ。変更申請そのものがずさんで、場当たり的なものであったことを自ら証明したようなものだ。

 水路切り替えによる地下水路は当初の評価書では240メートルだった。今回の変更申請で1022メートルまで延びている。当初案はダムから東側に水路を新設する予定だった。しかし切り替えに関する名護市との協議の見通しが立たず、市の権限が及ばないキャンプ・シュワブ内から地下水路を造る計画に変更したため、4倍以上に延びたのだ。
 防衛局は2011年末に県に提出した環境影響評価書で240メートル案について「暗渠(あんきょ)(地下)水路区間が最も短く、環境への影響を低減」できると説明していた。これに対して県は12年3月の知事意見で「自然豊かな多様性の創出が十分に期待できるとは言い難い」と指摘し、再検討を求めていた。
 地下水路によって太陽光が届かない部分が増え、美謝川と大浦湾を行き来する回遊魚への影響が懸念されている。これに対して防衛局は地下水路に太陽光の代わりとして照明や発光性光ファイバーの設置を検討していた。
 魚類に詳しい立原一憲琉球大理学部准教授は「自然河川の河口を暗渠にする計画自体が駄目だ」と批判する。コンクリートに囲まれた人工的な水路に照明がともり、その中を回遊魚が泳ぐ。これが自然環境を守る対策だと本気で考えていたのだろうか。
 今回の地下水路延長の変更には環境への影響を低減するという視点よりも、移設に反対する市との協議を回避するだけのお粗末な計画変更と言わざるを得ない。そもそも変更申請するべきではなかった。
 県は残り3件の変更申請について最終的な判断を出すことになる。こうした中、来月9日で退任する仲井真弘多知事が任期中に変更申請を承認する意向を示しているという。唖(あ)然とするほかない。選挙で有権者から次期知事には選ばれなかった人が県政の重要な決断をする資格はない。判断は次期知事に委ねるべきだ。