<社説>待機児童解消計画 保育士の待遇改善図れ


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 県が2017年度いっぱいで待機児童解消を目指すため、今後3年間で1万8千人余分の保育環境を整える方針を定めた。その実現には常勤職員が8869人必要となり、本年度より保育士を2千人以上増やさなければならない。

 保育士の仕事はハードだ。長時間労働、正規雇用率の低さと背中合わせの低賃金など、厳しい待遇が離職者を多くする要因になっている。子どもを親身に世話してくれた保育士の姿が見えなくなり、職場を去ったことを知り残念がる。そんな経験がある保護者は多いのではないか。
 豊かな保育環境は、認可外保育所を増やすなどハード面の整備や、単に保育士の数を増やすだけでは達成できまい。保育士の待遇を改善し、労働負担感や生活不安を抱かずに働ける職場環境をしっかり築くことが不可欠だ。
 県子ども・子育て会議でデータや改善計画が報告された。2015年4月に始まる「子ども・子育て支援新制度」に伴う市町村のニーズ調査を踏まえ、県は17年度の県内の保育所などの定員数を5万7760人と見込んだ。
 その結果、「潜在」を含めた本年度の待機児童数は1万8800人となり、17年度での解消に向け、常勤保育士2262人を確保せねばならない。数値目標を定めたからには、保育士確保の道筋をより具体化することが必要だ。
 了承された県の計画素案は、全市町村の具体的な数値目標を反映させたことに意義がある。県は保育所を整備する際の市町村負担額の支援拡充や保育士の給与を引き上げる「処遇改善特例事業」を継続したり、保育士になりたい人への修学資金貸し付け事業を手厚くしたりする方針を示す。
 市町村の財政負担への対処や認可外保育施設の多さなど多くの課題が横たわる中、県の指導力発揮が求められる。そこで沖縄特有の一括交付金を保育士の増員や待遇改善に充当できないだろうか。
 待ったなしの課題である保育士を増やすことこそ優先すべきではないか。一括交付金は人件費を伴う事業への支出は困難とされるが、現在の縛りを解き、本当に必要な事業に充当できるように制度を改めるべきだ。
 今月10日に就任する翁長雄志氏は知事選の公約に4年後までの認可保育所の待機児童ゼロを掲げている。公約達成の速度を上げ、抜本的解決を急いでほしい。