<社説>衆院選公示 憲法改正 正面から問え 沖縄に犠牲強要するのか


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 第47回衆院選が2日公示される。14日の投開票だ。

 2009年の政権交代、12年の政権奪還をわれわれは経験した。その成果と不首尾を総括すべきときだ。だが前2回に比べ有権者の関心が薄いと懸念されている。政治家が公約をほごにし、公約にないことを実行したことで、政治との距離が増したのではないか。
 公約を基に投票先を選び、政権党はその公約を守り、有権者が選択した未来を実現する。それで初めて国民は主権を実感するのだ。本来の主権者たる国民の手に政治を取り戻すため、候補者には公約の明示と実行の確約を求めたい。

 4年の猶予

 今回の選挙で真っ先に問われるべきは憲法改正の是非、なかんずく9条改正の是非である。
 この総選挙で自民党が勝利すれば、来秋の同党総裁選で安倍晋三首相が再選されるのは確実だ。総裁の任期は3年で、任期が切れるのは2018年秋だ。今から4年の猶予がある。安倍氏の宿願は祖父の岸信介氏もできなかった憲法改正と聞く。就任2年で集団的自衛権行使容認の解釈改憲を実行した首相のことだ。4年もあれば確実に憲法改正を実行するだろう。
 憲法改正は国の根幹の変更である。それなら最優先で争点にすべきだ。首相は、任期中に改憲を提起する可能性があるなら、その条項を具体的に明示し、国民の審判を仰ぐべきだ。あいまいなままで選挙を終え、「信を得た」として改憲に至るのは許されない。
 前回総選挙で自民党は憲法改正を掲げたとはいえ、公約に「集団的自衛権行使容認」の文字は無かった。解釈改憲もまた「国のかたち」を根底から変えるものだ。本来なら今夏の閣議決定の際に解散し、信を問うべきだった。
 とはいえ、その関連法案の整備はこれからで、来年の通常国会で審議されるはずだ。それならこの選挙でその是非を論ずべきだ。
 アベノミクスの成否について各党の見解は分かれる。確かに雇用総数は増えたが、増えたのは主に非正規だ。株価も上がったが、有価証券を持つ世帯は17%にすぎず、恩恵にあずかるのは一部だ。デフレ脱却は実現しつつあり、賃金も上昇した。だが物価上昇率は賃金上昇率を上回っており、実質所得はマイナスである。
 解雇しやすくする特区の新設や「残業代ゼロ法案」(日本型新裁量労働制)も取り沙汰されている。今後4年で上程されそうなこれらについても議論すべきだ。
 原発再稼働の問題も忘れてはならない。各党は堂々と論戦し、その是非を正面から問うてほしい。
 
 構造的差別
 
 各党に何より問いたいのは、沖縄に米軍基地の過重負担を押し付け、犠牲を強要する「構造的差別」を、今後も続けるか否かだ。
 今回の唐突な解散は女性閣僚起用の失敗が要因と評されるが、沖縄知事選での自民党敗北を覆い隠す趣も感じられる。だが沖縄の民意を正面から受け止めるべきだ。
 ことは米軍普天間飛行場の辺野古移設の是非にとどまらない。移設を容認した知事は現職としては前代未聞の大差で惨敗した。地元の市長も新知事も明確に反対を掲げて当選した。民主主義的手続きで示されたこの圧倒的民意を政府が無残に踏みにじるのなら、まさに「構造的差別」に他ならない。
 いや差別ではない、と言うかもしれない。だが例えば、この県に原発が既に数基あるからといって、知事も市長も明確に反対しているのに、政府が原発建設を強行できる所があるだろうか。
 問われているのは、日本が一地域を差別して恥じない国であるのか、民主主義を重んじる国であるのか、という根本なのである。
 自民党だけではない。知事選を経てもなお、辺野古移設を意味する「日米合意推進」を掲げる党が何と多いことか。各党は論戦を通じてその行き詰まりに気付き、日米関係の新しい地平を切り開く方向に早急に転じてもらいたい。