<社説>香港学生デモ 粘り強く民主化実現せよ


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 対話による平和的な解決はとうとう実現しなかった。

 香港政府は政府本部庁舎周辺の学生デモ隊を強制排除して本部庁舎の封鎖を解除し、政府機能を回復させた。
 民主化を求める学生たちの行動は内外に一定の共感を呼んだ。強制排除という形で終息させられたのは残念でならない。試練をばねに民主化を実現してほしい。
 今回のデモは、2017年の行政長官選で「1人1票」の普通選挙を導入するものの、立候補資格を制限し、親中派しか事実上出馬できない制度を中国が8月末に決めたことが発端となっている。民主派は6月、香港の人口の1割以上に当たる約79万人が参加した市民投票で、誰でも出馬できる制度を求める方針を決めていただけに、強く反発した。
 中国の方針は、30年前に英国と合意した「高度な自治」を実現するという返還条件に反する。中国は、香港情勢を調査するため英下院外交委員会が計画していた香港訪問も拒否した。
 米国統治時代の沖縄も、自らの代表を選挙で選べず、幅広い勢力を集めて主席公選運動に取り組み、米国に実現させた歴史がある。学生たちもこの運動に加わった経緯があり、香港の学生たちの行為は理解できる。
 しかし、長期の違法な道路占拠は、香港市民の生活を直撃し、共感を得られなかった。中国当局の分断政策もあったのだろう。
 とはいえ学生たちの行動は、香港の行政長官選挙が民主的でないことを内外に訴えることに成功した。今回の行動は民主化実現という大きな目標を成功に導くための過程の一つにすぎない。そのために道路封鎖、庁舎占拠という戦術を取り入れたわけだ。
 戦術は一定程度成功した。次は民主化という最終目的を達成するために、新たな取り組みを検討すべきではないか。
 香港の若者の「雨傘革命」は、周辺国の若者たちにも影響を与えている。台湾では一つの中国を目指す中国への警戒感が、学生らによる立法院(国会)占拠の形で噴き出し「ヒマワリ学生運動」となった。
 若者の純粋な行動は未来を切り開く原動力になる。今回の強制排除は決して挫折ではない。一時撤退だ。今後、粘り強い取り組みで幅広い賛同を集め、目的達成に結び付けることを期待する。