<社説>ベア2%以上要求 実質賃金上昇を中小にも


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 連合は来春闘で、定期昇給(定昇)分に加え、2%以上のベースアップ(ベア)を要求する方針を決めた。2年連続のベア要求で今春闘の1%以上から引き上げた。

 春闘の行方は、安倍政権の経済政策「アベノミクス」の真贋(しんがん)を見極めるバロメーターの一つとなろう。年明け以降に本格化する労使間の協議はもとより、賃上げをめぐる政府圧力の有無などにも注視したい。
 アベノミクスは円安株高を演出し、一部の大手企業や富裕層に恩恵をもたらしたのは確かだ。半面、消費税増税や円安による原材料価格の高騰などで物価上昇は続いており、庶民の暮らしを圧迫している。
 物価変動の影響を加味した実質賃金は、ことし9月まで15カ月連続でマイナスだ。物価高に賃金上昇が追い付かず、庶民の節約志向はむしろ強まっている実態がある。
 安倍晋三首相は賃上げをアベノミクスの成果と強調するが、額面通りには受け取れない。現段階では副作用のマイナス効果の方が大きいと捉えるべきだろう。
 とりわけ、もともと給与水準の低い中小零細や地方企業と大手企業の格差は広がっている。さらに、正社員と比べて賃金水準が低い非正規労働者が増えていることも、実質賃金が低下する要因となっていることにも留意が必要だ。
 安倍首相はこの2年間で「雇用は100万人以上増えた」と強気の姿勢を崩さないが、「雇用の質」の観点から疑問だらけだ。総務省の労働力調査で、2012年7~9月と14年7~9月を比較すると、正社員は22万人減ったが、非正規は123万人増えている。果たして、この現状を景気回復と呼べるだろうか。
 賃金上昇や雇用の改善が進み、消費や投資が活発化して初めて「経済の好循環」が生まれることは、衆目の一致するところだ。企業は先行き不透明を理由に、これまでのように利益を内部留保に回すことがあってはならない。
 連合は中小の労働者については定昇とベアの合計で一律1万500円のアップを要求し、初めて傘下の全組合がクリアすべき月給の「最低到達水準」を設定した。来春闘では、実質賃金がプラスになるような賃上げを実現し、中小や地方へもしっかりと波及させてもらいたい。併せて、非正規と正規の格差解消に向けても労使双方で知恵を絞ってほしい。