<社説>基地問題衆院選 普天間を正面から論ぜよ


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 14日投開票される衆院選では、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画の是非があらためて問われる。各党は普天間問題を真正面から取り上げるべきだ。

 11月の知事選でも県民の審判は出た。新基地建設阻止を掲げた翁長雄志氏が3選を目指した移設推進の仲井真弘多知事に約10万票の大差で勝利した。1月の名護市長選でも移設に反対する稲嶺進市長が移設推進候補を破っている。移設を拒む民意を直視することが、政府の取るべき道であることは明々白々だ。
 だが基地建設を拒む再三再四の意思表示にもかかわらず、菅義偉官房長官は「移設を粛々と進める」と言ってのける。安倍晋三首相も辺野古移設について「米軍の抑止力維持と普天間の危険性除去を考え合わせたときに唯一の解決策」と繰り返し、こうした日本側の姿勢に米当局も歩調を合わせている。
 だが「唯一の解決策」や「抑止力」の誤謬(ごびゅう)と欺瞞(ぎまん)性は、直近も日米の専門家が重ねて指摘している。
 保守系シンクタンク米ケイトー研究所のバンドー研究員は知事選結果を踏まえ、辺野古移設に関し「日本の安全保障に重要なのは空軍力と海軍力だ。米国が中国に侵攻することを想像する者などいない」と報告。海兵隊撤退を求め、日米安保は維持した上で「常駐なき安保」を構築すべきと提唱した。
 中国のミサイル技術の発達から在沖基地の「脆弱(ぜいじゃく)性」を指摘して米軍配備見直しを求めた知日派の代表格ジョセフ・ナイ元米国防次官補らの主張とも通底する。安全保障が専門の柳沢協二元官房副長官補は、遠距離からの海・空軍力による攻撃を主眼にした米軍戦略を紹介し、離島防衛などで海兵隊の出番は想定されていないと指摘。抑止力の虚構性を挙げ「地元から支持されない方針を変えないことの方が長期的に見て米国との信頼関係を傷つける」と懸念を示す。
 要は米側に「プランB」(移設計画の代替案)を受け入れる余地がありながら、日本側が米側に見直しを求めていないことが最大の問題だが、民意を見れば、計画を見直すしか解決の道がないことは明らかだ。
 辺野古は沖縄だけの問題ではない。日本の防衛、安保政策に直結するだけでなく国と地方の関係、民主主義の在り方を問う優れて普遍的なテーマだ。各政党と全国の候補者には選挙戦を通じて議論を深めてもらうよう強く希望する。