<社説>憲法改正衆院選 国民置き去り許されない


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 安倍晋三首相が衆院を解散し、長期政権を目指す最も大きな理由には悲願とする憲法改正があると見るべきだろう。憲法が改正されれば、国民生活にも大きく影響する。首相は衆院選を通して、その是非について正面から国民に信を問うべきである。

 第2次安倍政権の2年間を安全保障面から総括すると、戦争ができる国へと突き進んだと言わざるを得ない。特にこの1年は平和憲法を骨抜きにする動きが加速した。
 昨年12月には機密漏えいに厳罰を科す特定秘密保護法が成立、衆院選中の10日に施行される。ことし4月には武器輸出を可能にした防衛装備移転三原則、7月には集団的自衛権の行使容認を相次いで閣議決定した。
 中でも集団的自衛権の行使容認は戦後の安全保障政策を大きく転換させるものである。それを憲法解釈の変更で対応することには国民から批判がある。
 閣議決定直後の共同通信世論調査では、行使容認への反対は54・4%と半数を超え、賛成は34・6%だった。衆院を解散して信を問う必要があるとの回答は68・4%に上った。行使容認は国民から支持は得られていないのである。
 にもかかわらず、安全保障政策の転換を正面から掲げて国民の審判を仰がないのは、あまりに不誠実である。
 安倍首相の一連の安全保障政策の基をたどれば、自民党が2012年にまとめた憲法改正草案に行き着く。
 草案は自衛隊を「国防軍」へ改称し「自衛権の発動を妨げない」と規定した。「基本的人権の尊重」は条件付きとなり、「表現の自由」は条件が厳しくなる。衆院選で自民が勝利すれば、それらが現実のものとなる可能性が高まる。
 首相は集団的自衛権の行使容認の閣議決定後の記者会見で「さまざまな課題に対し目を背けずに正面から取り組んでいく責任がある」と述べた。取り組むだけでなく、首相には国民生活にとって重要な政策は主権者である国民の声を聞く責任がある。国民を置き去りにして憲法改正に前のめりになることは許されない。
 アベノミクスへの国民の期待感をかき立てる一方で、不人気な政策を争点から外してはならない。与野党とも憲法改正について活発に論じ合い、有権者が熟考する機会を提供する責任がある。