<社説>最高裁国民審査 権利行使の意味確認しよう


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 衆院選と同じ14日に最高裁裁判官の国民審査が行われる。「憲法の番人」としてふさわしいかどうかを国民が直接チェックする重要な機会であることを確認したい。

 最高裁は15人の裁判官で構成される。そのうちの1人が司法トップとなる長官だ。長官は内閣の指名により天皇が任命し、残る14人は内閣が任命する。憲法が定める国民審査は、国民の多数が適任ではないと判断した裁判官を辞めさせることができる制度だ。主権者の国民が司法をチェックするためのものだ。
 だが実際にはこれまで罷免された裁判官はおらず、制度の形骸化が指摘されて久しい。投票方式など審査制度の在り方についてもっと議論を深めるべきだろう。
 審査は裁判官の名前が書かれた投票用紙で、適任ではない裁判官の欄に「×」を書く方法で行われる。×印が有効投票の過半数となった裁判官は罷免されるが、何も記入しなければ信任したとみなされ、×印以外の記入は全て無効だ。
 裁判官に関する情報がある程度ない限り、「×」かどうかは判断できない。制度見直しを求める意見は以前からある。衆院選と同時という実施時期も含めて再考の余地があるのではないか。選挙戦の中で、最高裁国民審査はどうしても埋没しがちだ。国民審査の期日前投票が衆院選のそれから4日遅れて始まることにも疑問がある。
 裁判官の情報は裁判所のホームページや国民審査公報などで得ることができるが、「番人」としてその人がふさわしいかどうかを判断するための十分な量だとは言い難い。報道も衆院選の前にどうしてもかすみがちであり、メディア側にも反省すべき点がある。
 今回審査対象の5人の中には、沖縄に関する大きな訴訟に関与した裁判官もいる。沖縄返還をめぐる密約文書の開示を求めた訴訟で、上告を棄却し原告側敗訴を確定させた判断には2人の裁判官が関わった。東村高江の米軍ヘリコプター着陸帯の建設現場で反対運動を続ける住民に対し、沖縄防衛局が通行妨害禁止を求めた訴訟で、住民の上告を棄却した裁判官らも含まれている。
 三審制の中で最終の判断を下す最高裁は、国民の権利を保護すると同時に、場合によってはそれを制限する重大な役割と権限を担う。国民審査制度は、選挙権と並ぶ大事な参政権であることを自覚し、大事な権利について考えたい。