<社説>地方創生衆院選 豊かさ続く将来像提示を


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 日本は本格的な人口減少社会に入った。有識者でつくる日本創成会議は、2040年には896の市区町村が消滅する可能性を指摘する。国土交通省は、50年には10年時点で人の住む地域の63%で人口が半分以下に減ると推計する。

 地域経済は疲弊し、東京や沖縄などを除く39道府県で人口が減っている。地方創生は待ったなしである。
 衰退する地方をどう再生させるかは重要なテーマである。だが、各党の公約から地方が再生した姿をイメージすることは難しい。
 自民党は「過疎地域等で日常生活に不可欠な施設・機能を歩いて動ける範囲に集めた『小さな拠点』を活用し、周辺集落とネットワーク等で結び、住民生活を支える」ことを公約の一つに掲げた。人家が点在する過疎地域で、生活に不可欠な施設を「歩いて動ける範囲」に集積できるだろうか。
 政府は昨年12月、行政や医療・福祉、商業など街の機能を集約した「居住誘導区域」を指定し、郊外からそこに移り住むよう促すコンパクトシティー構想を全国で推進することを決めている。
 この構想と自民党公約に整合性があるとすれば、過疎地域の住民に移住を促すことが「小さな拠点」の前提になる。これを地方創生とするなら、国民の要求とは大きな乖離(かいり)がある。
 自民党公約は日本創成会議の提言を焼き直した感が否めない。
 日本創成会議は「コンパクトな拠点」とその周辺地域との「ネットワーク」形成、自治体間の地域連携を組み合わせた「地域拠点都市」の構築を提言する。「小さな拠点」はそれと同じとみていい。
 「小さな拠点」や「地域拠点都市」は平成の大合併を想起させる。平成の大合併では中心となる自治体に人口が集中し、過疎に拍車が掛かった地域もあった。その二の舞いを危惧する。
 安倍政権は行政の効率化のため、自治体再編を進めることを目指しているのだろう。そこには、地方が求める地方創生は存在し得ない。行政の効率化は必要だが、そこだけに重きを置いては国民が思い描く地方創生にはならない。
 地方の経済が衰退すれば、雇用を求めて大都市に住民が移動することになる。雇用を生み出す地域経済への支援が必要だ。
 各党は地方の豊かさが続く将来像を提示してほしい。