<社説>衆院選きょう投票 沖縄の未来見据えよう 「安倍政治」問う1票を


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 沖縄とこの国の行方を左右する第47回衆議院議員選挙はきょう14日に投開票される。沖縄への向き合い方など安倍晋三政権の2年間を総括し、沖縄にとって、日本にとってどの候補者、どの政党に投票することが望ましいのか。未来を見据えて1票を投じたい。

 安倍首相はこの衆院選の争点を自身の経済政策「アベノミクス」への評価と位置付け続けた。解散前、菅義偉官房長官はこう言明した。「何を問うか問わないかは政権が決める」。政権に有利に働くように争点を設定する思惑が露骨だ。異を唱えたい。争点を決めるのは主権者である国民の側だ。

改憲の是非吟味を

 安倍首相は消費税の再増税を先送りしたことを解散の「大義」と主張する。消費税再増税には民主党など主要政党が反対していないため、争点としてぼかされてしまった。
 有権者が支持しやすい増税先送りを解散の名目とし、首相は雇用の増加や株高など経済の明るい面ばかりを強調している。だが、国内総生産が2四半期連続でマイナスになり、大企業と中小企業の収益、富裕層と庶民の経済格差が広がるなど負の側面もしっかり問われなければならない。
 「アベノミクスへの評価」が前面に押し出され、憲法解釈見直しによる集団的自衛権の行使容認や特定秘密保護法施行、原発再稼働など賛否の分かれる重大な争点に焦点が当たっていない。それは、選挙戦を優位に展開する自民党が300議席超を占める可能性がある終盤情勢につながっていよう。
 安倍首相が長期政権を目指す最大の理由に憲法改正があることは間違いないが、遊説先で首相は悲願の改憲にほとんど言及していない。自民単独で憲法改正の発議に必要な3分の2の議席317に達するとの予測もある。改憲論議が加速することは間違いない。
 衆院選は政権選択選挙であり、今回は平和憲法が岐路に立つ重大な節目となる。政権益が優先された争点の枠内で判断しては賢明さを欠く。選挙の歴史的意義、各党の公約を深く吟味しなければならない。
 沖縄から見れば、11月の県知事選で問われた米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設の是非が全国的争点から抜け落ちている感が強く、遺憾だ。
 県民は知事選で辺野古移設「ノー」の強固な民意を発し、翁長雄志氏が圧勝した。しかし、安倍政権は辺野古の海上工事を「粛々と進める」との強硬姿勢を崩さない。

辺野古工法承認も争点

 沖縄の民意を日本全体としてどう受け止めるのか。民主主義の成熟度が問われる中、県内では知事選に続き辺野古問題が最大の争点になっている。
 沖縄の4選挙区には前職7人、元職1人、新人1人の計9人が立候補している。知事選に続いて出馬した1人が加わり三つどもえの1区を除き、公明党が支援する自民党公認候補と辺野古移設に反対する翁長雄志知事を押し上げた超党派勢力が真っ向から対決する構図である。
 自民党候補が経済振興と普天間飛行場の危険性除去を訴えているのに対し、超党派勢力は新基地反対と「県内移設推進」に転じた自民の「公約違反」を批判している。知事選の第2幕の様相だ。
 衆院選のさなかに退任直前の仲井真弘多前知事が新基地の工法の一部変更を駆け込み承認し、批判を浴びた。安倍政権と気脈を通じた判断であり、必然的に変更承認も重要な争点に浮上している。
 社会保障、子育て・教育など沖縄社会の課題も山積している。沖縄のことは沖縄が決める「自己決定権」をどう発揮するかが、再び県民に突き付けられている。
 選挙は民主主義の根幹をなす。全国的に投票率低下が懸念されているが、沖縄の不条理を正す民意をはっきり示すためにも有権者一人一人が投票所に足を運んでほしい。