<社説>安倍政権に信任 平和憲法が危機に オール沖縄の民意尊重を


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 第47回衆院選は自民党が絶対安定多数を獲得し、大勝した。

 自民党は政権公約に「憲法改正を目指す」と明記した。選挙結果を受けて安倍晋三首相は「改憲の必要性を訴えていく」と述べた。
 改憲勢力の協力が得られれば、憲法改正の発議に必要な「3分の2」議席を超え、憲法改正の動きが加速する恐れがある。国民投票などの関門がまだあるとはいえ、国民は危機感を持つ必要がある。
 平和憲法に込めた「不戦の誓い」が戦後70年を前に揺らぎ始めているのである。私たちは今、大きな岐路に立っていることを自覚せねばならない。

政権運営は謙虚に

 自民大勝の要因は政権批判の受け皿が無かったことの裏返しともいえる。安倍政権が信任を受けた形だが、対立軸を打ち出せなかった野党のふがいなさに負うところが大きい。戦後最低の投票率からもそのことがうかがえる。
 安倍首相の党内での存在感が増し、長期政権となる公算が大きい。改憲に積極的な他党議員が協力すれば、衆院の「3分の2」を確保する可能性もある。そうなれば、憲法9条改正が射程に入る。日本が戦争のできる国へとまた一歩近づく危険性が高まることを危惧する。
 歴代内閣が堅持した憲法解釈を国会議論も経ずに変更し、集団的自衛権の行使容認を閣議決定した安倍首相である。憲法改正まで一気に突き進む可能性がある。
 ただ、憲法改正の発議には参院でも「3分の2」以上の賛成が必要で、発議後の国民投票では、有効投票総数の過半数の賛成が改憲の要件となる。
 2016年の参院選が大きなヤマ場となる。憲法を改正すべきか否か。国民一人一人が真剣に考えることを求めたい。
 共同通信が10、11日に実施した世論調査では憲法改正に反対が45・6%、賛成は36・2%だった。国民が望むことが憲法改正でないことは明らかである。
 遅々として進まない福島の復興、持続可能な社会保障制度の確立、人口減少社会への対応、子育て世代への支援、疲弊した地域経済の立て直しなどに安倍首相は全力を挙げるべきだ。
 連立政権を組む公明党と合わせて与党の議席が3分の2を上回り、巨大与党が誕生する。与党は参院で提出法案が否決されても衆院で再可決できる。再可決が乱用されれば、参院の存在意義が問われかねない。
 安倍首相はこの2年、強引な政権運営に終始した。巨大与党だからこそ、謙虚かつ丁寧な政権運営を心掛けてもらいたい。

反基地の民意三度

 沖縄選挙区では、政府が推し進める米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設に反対する4氏全員が当選した。移設推進の自民党4氏全員は支持を得られなかった。
 県民は「沖縄のことは沖縄が決める」と自己決定権を行使し、政府与党に辺野古移設拒否をあらためて突き付けたことになる。知事選に続き「オール沖縄」で反新基地の民意が示されたといえる。
 政権公約に地元が三度(みたび)反対を明確に打ち出したこと、さらには衆院選沖縄選挙区で自民党公認が全敗したという現実を安倍政権は重く受け止め、移設を断念すべきだ。地元の民意をこれ以上無視することは民主主義国家として許されない。
 選挙区で落選し、比例で復活した自民党の4氏は政府与党と歩調を合わせた辺野古移設の公約が有権者から支持を得られなかった事実を真摯(しんし)に受け止めてほしい。
 「普天間の危険性除去」の一方で、辺野古に新たな危険をもたらす移設を沖縄の政治家が推進していいのか。「一日も早い危険性除去」なら普天間飛行場の即時閉鎖しかない。
 沖縄の代表として、過重な米軍基地負担を沖縄だけに押し付ける差別政策を今後も認めていいのかを、いま一度考えてもらいたい。