<社説>パキスタン襲撃 テロ封じ込めへ国際連携を


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 無防備な児童や生徒を襲撃するという卑劣極まりないテロ行為であり、いかなる理由があろうとも断じて許されるものではない。

 パキスタン北西部ペシャワルで、イスラム武装勢力「パキスタンのタリバン運動(TTP)」が、陸軍運営の学校を襲撃し、生徒132人を含む計141人を殺害、121人を負傷させた。襲撃犯7人全員も死亡した。
 犯行グループは教室で生徒や教師に向けて銃を乱射したほか、生徒が集まっていたホールで1人が自爆し多数を巻き込んだ。あまりに残虐な凶行に言葉を失う。国際社会から糾弾する声が相次ぐのは当然であり、最悪かつ醜悪なテロと断じざるを得ない。
 2007年に結成されたTTPは、ノーベル平和賞を受賞したマララ・ユスフザイさん(17)を約2年前に銃撃した過激派組織として知られる。パキスタン北西部やアフガニスタンとの国境地帯の部族地域を拠点に、反政府活動や自爆テロを繰り返しており、被害が後を絶たない。
 昨年9月にはペシャワルのキリスト教会で自爆テロを起こし、子どもを含む78人が死亡。ことし6月にはカラチの国際空港を襲撃し、18人が死亡している。今なおマララさん殺害を警告しているが、単なる脅し文句だとして看過することはできないだろう。
 パキスタンに限らず、女性や子どもの教育を否定し、テロや暴力で抑圧するイスラム過激派の蛮行が世界各地で相次いでいるのは、極めて由々しき事態だ。
 イラクとシリアを中心に急速に勢力を拡大する「イスラム国」や、米中枢同時テロを起こした国際テロ組織アルカイダ、アフガンのタリバンなどのほか、アフリカや東南アジアでも偏狭な思想を掲げる過激派組織が存在し、地域社会の脅威となっている。
 暴力に訴える不条理な無差別テロは、国際社会への攻撃そのものであるだけでなく、平穏に暮らしている大多数のイスラム教徒に対する冒涜(ぼうとく)以外の何物でもないと認識すべきだ。
 今月15日のオーストラリアの立てこもり事件もイスラム過激派に共感したとみられる犯行であり、カナダでも10月に連邦議会襲撃事件が発生した。中東など過激派組織を抱える地域だけの問題ではないことは明らかだ。過激派封じ込めに向け、国際社会の一層の連携と取り組みが急がれる。