<社説>国際新航路開設 県産品輸出拡大に生かそう


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 経済発展著しい東アジアと沖縄を直結する航路が生まれた。琉球海運が運航する沖縄-台湾・高雄航路と商船三井の外航航路が接続する国際航路の運航が始まる。沖縄発の海運物流がアジア、世界へと広がる。県産品の輸出拡大を促す動脈として最大限活用したい。

 琉球海運と商船三井は「沖縄主導型の国際航路サービス」を掲げている。沖縄のニーズにきめ細かく対応し、サービスや安心を提供するという決
意の表明だ。沖縄の産業振興に資す
る航路を維持・発展させてほしい。
 台湾のハブ港である高雄を拠点に国際航路を開設した意義は極めて大きい。輸送時間の短縮と輸送経費の軽減につながるからだ。
 例えば大市場の香港へ貨物を送る場合、博多など日本本土の港や韓国・釜山港などを経由するため約2週間の日数を要した。新航路だと最短6日間に短縮し、輸送コストも抑えることができる。
 輸送時間や輸送コストは県産品輸出の課題であるだけに、新航路の開設はアジア市場をにらんだ沖縄の製造業にとって朗報だ。
 沖縄は「アジアの玄関口」として特色ある地域づくりを目指している。アジア各国に向けて沖縄から運び出された貨物が日本本土を経由するのでは、沖縄の地理的優位性を生かすことができない。新航路開設は沖縄の振興に大きく寄与することになろう。
 幸い、那覇空港を拠点とした全日空の国際航空貨物事業によって「空のハブ化」は着実に進んでいる。県内経済界は海上と航空輸送を連携させた「シー・アンド・エアー」を求めている。新航路はこのような経済界のニーズに応えることになるだろう。
 航路を生かすためにも、沖縄から県外に出す貨物が極端に少ないという「片荷」状態を解消したい。
 2013年度の那覇港の輸出入コンテナ貨物取扱量(20フィートコンテナ換算)は約8万6千個で、国内15位の水準にある。ところが2万4千個は「空コンテナ」で、輸出の57%を占めている。空気を輸出しては沖縄の経済振興にはつながらない。
 黒糖やモズク、ビール、泡盛、畜産加工品などが輸出品目として想定されている。沖縄の素材を生かせば、アジア各国でも競争力を持つ商品を生み出すことは可能だろう。輸出品目を増やし、物量を拡大するための官民一体となった努力を求めたい。