<社説>’14回顧 教育 子どもが飛躍する契機に


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 県教育界で特筆すべきは、4月に実施した全国学力テストで公立小学校が初めて全教科で最下位を脱出し、総合24位と躍進したことだ。算数Aは一気に6位に上がり、西日本では1位となった。

 「やればできる」を実証したことを高く評価したい。躍進に満足せず、学力を応用する力へと発展させ、創造する力を身に付けさせ、子どもたちが飛躍する契機としたい。
 次回以降も安定した成績を維持するには家庭学習を習慣化させるなど保護者の協力も不可欠であることを確認する必要がある。
 全国学力テスト対策のため、過去のテスト問題を解かせることに時間が割かれ、本来の授業が予定通りに進まなかったり、学校行事を簡素化せざるを得なかったりしたケースもあったという。
 順位を上げることに力点を置くあまり、本来の学校教育に支障があってはならない。均衡の取れた教育を心掛けてもらいたい。
 一方、公立中学校は調査開始以来7回連続全教科で最下位だった。改善が求められる。生徒の潜在力を引き出す指導を期待したい。
 共同採択地区内で同一の公民教科書を採択できなかった八重山教科書問題は5月、3年がかりで解決をみた。教科書無償措置法が4月に改正され、県教育委員会が竹富町を共同採択地区から分離したことで、竹富町は来年度から教科書を単独採択できることになった。
 自民党政権はこの間、竹富町にも保守色の濃い育鵬社版の採択を迫ったが、竹富町教委、県教委ともその圧力に屈しなかった。子どもたちの教育のためを考えて譲歩しなかったことで、教育行政への信頼は高まったと言えよう。
 中教審は10月、「道徳」の教科化を下村博文文部科学相に答申した。2018年度から実施される。
 07年に中教審は「個人の内面の評価につながる」と反対し、教科化は見送られた。今回は教科化ありきの議論に終始した。
 愛国心教育を浸透させたい安倍政権の意思が反映されたことは確実だ。
 道徳の教科化は多様な価値観の否定につながりかねず、「忠君愛国」を国民道徳として強調した戦前の「修身」を想起させる。
 教育に求められるのは価値観の押し付けではなく、子どもたちが自ら考える力を育てることである。大きな可能性を持つ子どもたちの成長を第一に考えるべきだ。