<社説>文化・自然’14回顧 未来継承の責務共有したい


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 ことしは県内で日本の考古学上、重要な発見が相次いだ。南城市のサキタリ洞遺跡から2月、石器に代わる鋭利な貝製の道具や装飾品が出土した。国内最古となる2万3千~2万年前(後期旧石器時代)のものと分析されており、世界的にも貴重な発見とされる。

 サキタリ洞遺跡では今月にも9千年前より古いとみられる人骨が見つかった。特徴は人為的に埋葬されたと考えられる点だ。埋葬と断定されれば、国内最古級の埋葬人骨の可能性がある。当時の埋葬文化を知る上で重要な手掛かりとなる発見だ。
 県内ではこれまでにも約3万2千年前の山下洞人や約1万8千年前の港川人など旧石器時代の人骨が多数見つかっている。石垣市の白保竿根田原(さおねたばる)洞穴跡からは骨の分析から年代が特定されたものとしては国内最古となる2万4千年前の人骨が確認されている。
 貴重な人骨が県内で相次いで発見されるのは地質にも起因している。日本本土は旧石器時代に降り注いだ火山灰によって骨を溶かす酸性土壌が広がっているのに対し、沖縄は石灰岩によるアルカリ性の土壌が広がっており、骨が溶けにくい。沖縄が考古学や人類学にとって非常に重要な場所であるのは明らかだ。さらに調査・研究の環境整備を進める必要がある。
 自然環境でも沖縄が重要な場所であることを認識した1年となった。3月に慶良間諸島と沖合7キロまでの範囲が国内31カ所目の国立公園に指定された。県内では1972年の西表石垣国立公園の指定以来2番目となる。慶良間諸島周辺海域は約250種類のサンゴの生息が確認され、沖合はザトウクジラの繁殖地だ。青く透き通った「ケラマブルー」と呼ばれる貴重な海を守るための努力を重ねたい。
 環境省の有識者会議が日本の排他的経済水域内で生物学や生態学の観点から重要な場所を「重要海域」として初めて認定した。県内から米軍普天間飛行場の移設先とされる名護市辺野古沖など18カ所が選ばれた。専門家が生態系の保全で重要な場所と位置付けた。絶滅危惧種のジュゴンやアカウミガメなどが生息する辺野古沖への新基地建設は許されるはずがない。
 沖縄の貴重な自然、文化を未来に継承することは現代を生きるわれわれの責務だ。掛け替えのない財産を残すことの重要性を共有したい。