<社説>暮らし’14回顧 早期に軽減税率導入せよ


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 消費税増税、安倍政権の経済政策「アベノミクス」による物価や輸入価格の上昇などで、2014年は庶民の暮らしが厳しさを増した年といえる。

 消費税増税法は12年8月、民主・自民・公明の3党合意で成立した。「税と社会保障の一体改革」として、医療・介護、年金などの社会保障改革を増税と一体でやるはずだった。しかし、安倍政権はアベノミクスを優先させ、社会保障改革は先送りされた。消費税増税は国民との約束違反だ。
 その一方で70~74歳の医療費窓口負担は2割に引き上げられ、国民年金と厚生年金の支給は0・7%減額されるなど、国民に負担を強いる政策が先行した。
 アベノミクスで確かに大企業の業績は改善しただろう。しかし、その恩恵は庶民まで行き渡っているとは言い難い。むしろ物価上昇で実質賃金は低下した。
 県内の9月の家計調査では、1世帯当たりの消費支出は19万9271円で前年同月比18・2%減となった。6カ月連続で前年を下回っており、買い控えが広がる状況がうかがえる。自公は17年度中の軽減税率導入に合意したが、消費税10%引き上げを待たずに早めに実施すべきだ。
 出生率全国一の沖縄にとって、仕事と子育てを両立できる環境づくりは大きな課題だ。しかし、14年度の潜在的な待機児童は1万8800人といわれ、保育ニーズに施設整備が追い付かない。それと併せて保育士不足の解消を図る取り組みも欠かせない。
 県は17年度いっぱいで今より保育士を2千人増やす計画だが、その道筋を具体化する必要がある。子育て環境を整えることは未来への投資といってもいい。待機児童ゼロへ知恵を絞りたい。
 高齢者介護も現役世代の負担になっている。「介護離職」は年間10万人以上といわれる。厚生労働省は介護休業期間を拡大する方向で検討に入ったが、この状況を早めに改めなければならない。
 県内の介護休業取得率(推計)は1・4%で、全国平均3・2%の半分にも満たない。高齢者の多い県内で介護が大きな負担になっているのは容易に想像できる。
 やがて団塊世代が介護を受ける世代に入る。介護離職の急増も予測され、仕事と介護を両立できる社会環境づくりが急務だ。