<社説>新年を迎えて 未来への責任自覚を 「豊かな沖縄」起点の年に


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 戦後70年となる新年を迎えた。平和の尊さをかみしめ、子や孫に誇れる沖縄づくりについてあらためて考え、その道筋を確立する起点の年にしたい。

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設を強行する政府の圧力はことし、一段と強まることが予想される。自己決定権を行使して昨年の各選挙で示した「移設ノー」の民意を背景に、政府を移設断念に追い込む態勢の構築が求められる。
 その先にある「豊かな沖縄」を実現することは、今を生きる私たちの未来に対する責任であることを自覚したい。

反省の継承必要

 「戦争の世紀」といわれた20世紀が終わって15年になるが、テロの応酬、軍事対立が続き、「世界平和」には程遠い。
 わが国はどうか。平和を維持するには、70年前の国民の反省を継承する必要がある。だが、戦争体験者の減少とともに継承する意識が薄れてはいないか。そればかりか政治が戦争の反省を疑問視し、戦争ができる国へと突き進む動きが顕著になっている。
 昨年7月、安倍内閣は集団的自衛権の行使容認を国会審議も経ずに閣議決定した。ことしは自衛隊の海外派遣を随時可能にする恒久法が制定される可能性がある。
 今こそ、国民は平和憲法の精神に立ち返り、戦争の反省に立って異を唱える必要がある。
 軍事力に頼らない共存の時代に向けて、国内唯一の住民を巻き込んだ地上戦を経験した沖縄から日本、そして世界を変えていく気概も県民として持ちたい。
 県民は戦後この方、戦争の悲惨さ、命の大切さを心に刻み、「基地なき沖縄」を希求してきた。
 それを実現する上で、最大の障害は政府の硬直した姿勢と言っていい。国土の0・6%しかない沖縄に在日米軍専用施設の74%を押し付ける状況はどう考えても理不尽である。
 だが、政府は県民の改善要求を一顧だにしない。米軍基地から派生する事件、事故に県民が苦しみ続ける現状をこれ以上、許してはならない。
 政府は昨年、普天間飛行場の辺野古移設工事に着手した。国内19の学術団体が「著しく高い生物多様性が維持される世界的に大変貴重な場所」とする大浦湾海域を埋め立てさせては、将来に禍根を残す。政府を翻意させられるか。翁長県政には正念場の年となる。
 住民を危険と騒音にさらす東村高江の米軍ヘリ着陸帯建設計画も中止させ、完成施設は撤去させる全県的な取り組みが必要だ。

困難にも果敢に

 沖縄には世界に誇れる豊かな自然環境があり、それを活用した観光面での将来性は高い。台湾企業の沖縄に対する投資熱の高まりなどはその表れである。投資を持続させるためにも、自然を破壊する米軍基地の整理縮小が必要だ。
 米映画テーマパークのユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の新テーマパーク候補地に名護市が挙がっている。進出が実現すれば、沖縄観光にとって大きな起爆剤となる。
 官民挙げてUSJ誘致に取り組み、進出の障害となる課題を一つ一つクリアし、沖縄観光の魅力増大の好機にしてほしい。
 琉球海運の台湾・高雄航路と商船三井の外航航路が接続され、那覇から世界各国への輸出が可能となる国際航路が新設された。全日本空輸(ANA)の那覇空港を拠点とした国際航空貨物事業と合わせ、空と海の「アジアの玄関口」に近づいたといえよう。
 海の国際航路新設を契機に、アジア各国のニーズに合った商品開発に知恵を絞り、県産品輸出拡大につなげてほしい。
 沖縄はさまざまな発展の可能性を秘めている。それを生かすには県民の努力が鍵を握る。沖縄に誇りと自信を持ち、困難にも果敢に挑み、「豊かな沖縄」へと着実に歩を進めたい。