<社説>沖縄経済展望 自立へ行動の年に 揺るぎない優位性確立を


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 2015年の沖縄経済は、14年以上に成長が見込まれる。

 5人の専門家の予想(1日付本紙)によると、総合評価は100点満点で82点となり、採点を始めた08年以来過去最高点となった。全業種とも全て前年を上回り、リーマン・ショック前を超える水準だ。
 観光は国内客だけでなく、円安効果やアジア向け航空路線の増加で海外客も好調を維持し、経済を先導するだろう。国際物流拠点(ハブ)機能の強化などを通じて、自立へ向け確かな一歩を踏み出す年にしたい。
 
依存からの脱却

 戦後70年の沖縄経済を振り返ると、敗戦から米統治時代は基地依存経済だ。沖縄はドル経済圏に組み込まれ、基地から得るドルを使って日本からの輸入に頼った。その結果、第3次産業が肥大化し、ものづくり(第2次産業)が育たない構造になっていく。日本復帰後は国の予算に頼る財政依存経済で、高率補助による公共事業に偏重してきた。
 二つの依存体質によって、全体的に逆境をはねのけ創意工夫する土壌が育ちにくく、自立に結び付かなかった側面がある。ところが現在の沖縄経済は一大転機を迎えようとしている。
 14年の沖縄経済は、円安に加え、那覇空港国際線旅客ターミナル、クルーズ船ターミナルの運用開始などで入域観光客数は順調に推移し、初の700万人突破が確実な情勢だ。4月の消費税増税の反動もあったが、消費は全般的に回復した。
 沖縄への投資も活発化し、外資系のホテルや大手運輸業の県内進出、米映画テーマパークのユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の名護市進出検討が明らかになった。
 那覇空港を拠点とする沖縄国際物流ハブは5年を迎えた。県内船会社が相次いで台湾の国際ハブ港へ新規接続し、空と海の玄関口としての役割に期待が高まる。第1回沖縄大交易会の開催で、アジアの中心に位置する沖縄の地理的優位性が注目を集めた。
 このように好調な観光などに支えられて沖縄経済の基地依存度が低下している。県民総生産に占める基地関連収入の割合は日本に復帰した1972年に15・5%だったが、2011年は4・9%に低下している。
 県の試算で米軍普天間飛行場に関わる経済効果は120億円だが、返還後の直接経済効果は4522億円(06年度調査)と38倍になる。昨年当選した翁長雄志知事が指摘するように「基地は沖縄経済発展の最大の阻害要因」となっている。
 
「アジア経済戦略」

 県は年明けから「アジア経済戦略構想」の策定を本格化させる。人口が減少する国内ではなく、成長が続くアジア市場の動向を分析し施策に盛り込む。
 その際、那覇空港を拠点に県外とアジア各地を結ぶ国際航空貨物事業や、那覇、浦添など5市を指定した国際物流拠点産業集積地域(国際物流特区)を生かした施策の実現が、沖縄経済発展の鍵を握るだろう。
 日本銀行那覇支店長の松野知之氏が指摘するように、既存商品の販路拡大だけではなく「『沖縄プラス・ワン』の発想で、新たな商品開発、製造・加工拠点の整備」も急がれる。沖縄は大量生産には向かない。付加価値の高い商品で差別化を図る必要がある。
 戦後70年、先人は廃虚の中から復興を果たした。その中の一人で金秀グループ創業者の呉屋秀信氏は次のような経営哲学を持っている。
 「商売人として、初めから『もうけよう』という発想は違う。『県民のためのサービスは何か』を主眼に置かないと、経営はうまくいかない」(1日付本紙)
 創業者の志を継ぎ、沖縄経済の自立に向け何が必要なのかを県民が共に考え、具体的な行動に移す年としたい。