<社説>雇用ミスマッチ 「質」高める努力尽くせ


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 働きたくても安定した待遇で迎えてもらえず、求めている職に就けない。こんな悩みを抱える県民が多いことが数字で裏付けられた。

 県内で求職する人の76%が正社員を望んでいるが、企業側の求人に占める正社員の割合は28%にとどまっている。沖縄労働局の2013年度の統計で明らかになった。
 求職と求人の条件が合わない「雇用のミスマッチ(不適合)」が深刻化している。これまで県内の雇用施策は失業率改善を最大の目標にしてきたが、「雇用の質」の改善を軸足に据えた政策の転換が不可欠だ。
 必要な人材が確保できる充足率は、正社員を募った場合の方が約7倍高いというデータもある。社員のやる気の持続や人材育成を見据えれば、企業側の利点は多い。国や県と企業が一体となり、正規雇用を増やす実効性ある対策を急いで講じてほしい。
 県内の雇用状況には大きな変化が到来している。14年11月の有効求人倍率は0・77倍で、復帰後の最高値を6カ月連続で更新している。完全失業率は5・2%だった。全国に比べて高いものの、11年から3年連続で低下傾向にあり、全国との差は縮まっている。
 その半面、県内は収入や労働条件が不安定な非正規労働者の割合が全国最多だ。公共職業安定所に寄せられた13年度の新規求人のうち、非正規雇用は71%に上り、全国平均の59%を12ポイントも上回る。
 福祉関連や建設業、宿泊などのサービス業など特定業種の人手不足が悪化しているが、反比例するかのように失業率が低下している要因に非正規雇用の増大がある。そのジレンマをどう解消するかが沖縄社会の喫緊の課題である。
 県内景況は観光入域客の増加などによりおおむね順調だ。だが、人件費削減を図る企業側が安価な労働力と位置付ける非正規労働者の確保に走る傾向がある。繁忙期がある業界では、忙しい時期だけ雇う形態が常態化している。
 最初の働き口が非正規雇用にならざるを得ない高校や大学の卒業生も多い。若者が高い離職率と低所得にあえぎ、県内の格差社会を助長する悪循環も生じている。
 翁長雄志知事は先の知事選で、雇用のミスマッチに対する支援強化、職業能力開発の充実などを挙げ、「格差社会の是正に取り組む」と力説した。その公約を果たすためにも指導力を発揮してほしい。