<社説>事業所内保育所 3歳児の受け皿確保を


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 安心して子育てできる環境の整備は、自治体にとっても企業にとっても大きな課題だ。少子化が危ぶまれる現状ならなおさらである。

 その意味で歓迎すべき動きだ。県子ども生活福祉部が、事業所内保育所の認可化移行に必要な施設整備費の補助を検討していることが分かった。県のアイデアを高く評価する。ぜひ実現してほしい。
 事業所内保育所は、送迎による時間の損失を最小限にできる上、子どもの緊急時にすぐ対応できる安心感もある。夜間や休日など通常の保育所が応じていない部分に対応する点も、働く親にとってはありがたい。企業にとっても離職率低下、優秀な人材の確保につながろう。
 半面、現行では認可外だから公的な助成が乏しい。保育料では保育士の給与など運営費を到底賄えないから企業の負担感は大きい。
 だが2015年度から始まる子ども・子育て新制度により、従業員以外の地域の子を一定程度受け入れるなどを条件に認可化されることになった。運営費の公的補助が拡大すれば企業の負担は緩和され、導入企業の増加も期待できる。
 事業所内保育所は認可保育所の受け入れが追い付かない0~2歳児も受け入れており、拡充は待機児童解消に大きな効果があろう。
 認可には施設の広さや保育士の数、屋外遊戯場の面積などの条件もある。今回、県が補助を検討するのはそのための施設整備費だ。
 県は一括交付金を活用する考えという。一括交付金は県や市町村が使途を自由に決められるというのが本来の趣旨だが、現状は国が使途を制限しており、従来の補助金とそう変わりがない。今回も国が認めるかどうか不透明だ。
 しかし安倍内閣が「女性が輝く社会」を標榜(ひょうぼう)するのであれば、認めるのは自然な流れだ。県は17年度まで補助を継続したいというが、国もぜひ認めてもらいたい。
 一方で、この施設整備補助を始めてもなお課題は残る。当該企業従業員以外の子の3歳以降の行き場がないのだ。
 これは事業所内保育所の地域枠だけの問題ではない。小規模保育や「保育ママ」など、国が推進する保育事業でも同様だ。現状の待機児童は0~2歳児が問題だが、新制度始動後は3歳児の受け皿が新たな課題になりそうなのだ。
 問題となる年齢がスライドするだけでは意味がない。国は課題に対応する制度設計をしてほしい。