<社説>戦後70年首相談話 アジアへの加害責任明記を


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 安倍晋三首相の歴史認識が問われている。

 安倍首相は年頭の記者会見で、戦後70年の首相談話に第2次世界大戦への「反省」を盛り込む意向を明らかにした。
 「反省」を盛り込むなら、アジア諸国に対する侵略戦争の加害責任と不戦の誓いを明記すべきだ。
 安倍首相は2013、14年の全国戦没者追悼式の式辞でアジア諸国への加害責任に言及しなかった。アジア諸国は、過去の植民地支配と侵略を認めた村山富市首相談話を安倍首相が上書きしようとしているのではないかと警戒している。
 警戒するのは、安倍首相が「侵略の定義は定まっていない」と国会答弁するなど、歴史修正主義的な考えを持っているとみられているからだろう。
 安倍首相は、戦後70年談話について、先の大戦への「痛切な反省」を盛り込んだ村山談話を基本的に踏襲する考えを示した。しかし「全体として」引き継ぐとしているため曖昧さが残る。
 ナチスドイツ時代の歴史認識について、ジャーナリストのラルフ・ジョルダーノ氏は、ナチスを生み出した当時のドイツ人を「第一の罪」と呼んだ。戦後「第一の罪」を否定する動きを「第二の罪」と批判した。
 「第二の罪」とは、例えば虐殺など他国の被害は極小に見積もり、逆に自国の被害は極大に見積もることだ。「われわれは何も知らなかった」と開き直り、アウシュビッツなどの重大事件は起こらなかったことにする。「強制収容所はドイツの発明じゃない」という言説により自国の責任が遠のいていく。
 アジア諸国に対する加害の歴史を否定、あるいは薄めようとするなら日本も「第二の罪」を犯すことになる。
 年頭会見で首相は、世界の平和と安定に責任を果たすとして、70年談話に自らが掲げる積極的平和主義の理念も発信する考えを強調した。だが、集団的自衛権行使の容認を閣議決定したように、積極的平和主義とは平和憲法の骨抜きでしかない。
 戦後70年談話に加害責任を曖昧にしたまま、自らが掲げる積極的平和主義を盛り込んだ場合、国際社会から理解を得られないだろう。戦後70年を迎え、体験者がどんどんこの世を去っている。戦後世代には、歴史に謙虚に向き合う姿勢が求められている。