<社説>民主代表選 「第2自民」では再生しない


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 民主党代表選が始まり、長妻昭元厚労相、細野豪志元幹事長、岡田克也元外相の3氏が立候補した。

 政権党の座から転落して2年、お世辞にも有権者の信頼を回復できたとはいえまい。先の衆院選で半数に遠く及ばない200人足らずの候補者しか擁立できなかった事実が、それを雄弁に物語る。
 3氏は自民「1強」体制打破を訴えるが、現状でなぜ受け皿たり得ていないのか。美辞麗句の公約を並べても政権を取るやいなや、かなぐり捨てるとみられているからだろう。
 沖縄にとって、米軍普天間飛行場の辺野古移設問題で「最低でも県外」の約束をあっさりほごにした記憶は今も生々しい。原発についても、脱原発を一度は公言しながら、「脱原発依存」などと詭弁(きべん)を弄(ろう)して次第に曖昧にした姿が印象に残る。公約に反して消費税増税にかじを切った事実も重い。
 政権担当時の背信を深く反省し、公約を破ることは二度としないとの確固たる姿勢を示さない限り、国民の信頼は得られまい。
 その上で求められるのは、自民党への毅然(きぜん)とした対立軸だ。現状ではその点も心もとない。
 3氏とも格差社会是正の方向性を打ち出したのは評価できる。最も消費需要が高いのは低所得の若年・子育て層である。その意味で格差是正が消費喚起に直結するのは自明だ。だが具体的な処方箋は3氏とも明示していない。選挙戦ではその具体策を競ってほしい。
 安倍政権への対峙(たいじ)を国民が最も望むのは安全保障の分野だ。だが集団的自衛権の行使に反対と明言したのは長妻氏だけ。岡田氏は「国民の半数以上の賛成がないままの」閣議決定を批判するだけで、容認に含みを残す。細野氏は行使を容認する「安全保障基本法」制定を目指すという。これでは自民党との違いが分からない。
 原発もしかり。再稼働しないと明言したのは長妻氏だけで、細野氏は再稼働の是非に触れず、岡田氏も「2030年代の稼働ゼロ」というから、あと20年は稼働することになる。
 何より残念なのは辺野古移設を3氏とも依然、明確に否定していない点だ。選挙という民主的手段で明示した沖縄の民意に背を向けるというなら、「民主」党の名が泣く。このまま「第2自民党」たる政策に終始するなら、党の再生などおぼつかないはずだ。明快にかじを切ってもらいたい。