<社説>F16暫定配備 政府は訓練中止を求めよ


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 一地域の治安維持を担う自警組織がわざわざ他国で訓練し、周辺住民の安全を脅かす。このような不条理が許されるはずがない。

 米中西部ウィスコンシン州の州兵空軍に所属するF16戦闘機12機と兵員約250人が今月、嘉手納基地に暫定配備され、訓練を行う。期間は数カ月の見込みという。
 州兵とは本国防衛や災害救助を任務としている。練度を高めたいのなら自国で訓練をすればよい。州兵の訓練は受け入れられない。日本政府は配備中止を米国に求めるべきだ。
 同軍は「米空軍や他国のパートナーとの統合運用能力を高める機会をパイロットに与える」と説明しているが、沖縄で実施する必要性があるとは考えられない。
 軍事評論家の神浦元彰氏は「中国をけん制して米側の軍事的優位を示す狙いがある」と指摘し、定期的に嘉手納基地に配備される可能性があると論じている。米国の州兵部隊の暫定配備が恒常化することなど全く論外である。
 嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協)会長の當山宏嘉手納町長は「日米両政府が強調する負担軽減とは逆行するものだ」と反発している。当然だ。両政府が掲げる「負担軽減」は全く進んでいないのが実情だからだ。
 両政府は2010年5月、訓練の県外移転拡充で嘉手納基地周辺の騒音を軽減することで合意した。11年1月にはF15訓練のグアム一部移転にも合意している。合意に基づく訓練移転で基地負担軽減が進むと両政府はアピールした。
 ところが実態は逆だ。F22ステルス戦闘機の暫定配備など外来機の飛来増加によって基地負担が増しているのが実情だ。
 13年度の嘉手納基地への航空機の離着陸回数は前年度を1万回も上回る4万7078回で、10年度以降、最多となった。そのうち外来機の発着回数は1万2342回で前年度比24%の増である。外来機が周辺住民に多大な基地被害を与えているのは明らかだ。
 周辺住民にさらなる基地被害を強いる米州兵空軍の暫定移駐を容認しながら、訓練移転による基地負担軽減をアピールするのは国民の目を欺く行為だと言わざるを得ない。
 見掛け倒しの負担軽減を喧伝(けんでん)する前に、日本政府は沖縄の基地被害と正面から向き合い米国と交渉すべきだ。州兵の暫定移駐を許すようでは主権国家と呼べない。