<社説>陸自住民投票 結果出るまで配備中断を


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 与那国島への陸上自衛隊沿岸監視部隊配備の賛否を問う住民投票条例一部改正案が町議会で可決された。これを受け来月22日に投票が実施されることになった。自衛隊配備という住民生活に重大な影響を及ぼす事柄について、町民の意思を直接問うのは意義深い。

 住民投票は2012年に実施される可能性があった。住民投票を求める署名活動で544人の署名が集まり、住民側が条例制定を直接請求した。しかし議会が否決して実施は見送られている。直接請求から投票実現まで3年近くを要した。その間に基地配備の作業が着々と進んでいることは残念でならない。
 沿岸監視部隊の駐屯地建設工事は昨年4月に起工式があり、現在は土地の造成工事が進んでいる。江渡聡徳防衛相は昨年11月、住民投票に関連して「今までの流れを踏まえながら粛々と対応していきたい」と述べ、15年度末の配備予定に変更がない考えを示している。
 外間守吉町長も「配備を白紙にするのは難しい」と述べ、自身の考えを変えるつもりがないことを表明している。防衛相と町長は住民投票をないがしろにしており、政治家として極めて不見識だ。
 可決された条例はこう定めている。「町長および本町議会は投票結果を尊重し、国および関係機関と協議して(自衛隊の)配備について町民の意思が正しく反映されるよう努めなければならない」。
 条文通りに解釈すれば、町長は投票結果を尊重し、町民が示した意思に基づいて国に働き掛けなければならないのは当然だ。国も「町から自衛隊に来てほしいとの要望があり、こういう形になった」(江渡防衛相)との立場を示しているのだから、住民意思を重く受け止めるべきだ。
 条例では町民が基地配備の是非を判断するための「必要な公平かつ中立な情報の提供」と住民説明の開催を町長に求めている。この機会に与那国島に自衛隊を配備する必要があるのかについて議論を深めてほしい。軍備がさらなる軍備増強や緊張関係を生み、戦争を引き起こす危険性を高めることにならないかなど、町民は正確な情報を把握した上で判断してほしい。
 投票実施が決まった以上、国は現在進めている工事をいったん中止すべきだ。そして住民投票の結果次第では配備撤回にかじを切ることが当然、求められる。