<社説>食品への異物混入 信頼得るため全事案公表を


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 ホットケーキに金具、フライドポテトに人の歯、ベビーフードにコオロギ。全国に3千店以上を展開するマクドナルドをはじめ、食品に異物が入っていたとの苦情が全国で相次いでいる。

 日本マクドナルドは会見を開き、福島県郡山市の店舗で商品の中に入っていたプラスチック片で子どもが口の中を切るけがをしたケースなど4件の異物混入を公表した。
 健康被害はなかったとしても食品への異物混入は、食の安心安全を根底から揺るがし、消費者の不安を広げる。企業は製造過程での混入の可能性を検証し、原因究明を徹底し、再発防止に努めてもらいたい。
 同時に異物混入が起きた場合、全ての事案を公表するルールづくりに業界として取り組んでもらいたい。
 公表に関して大手企業は独自に基準を設けている。その多くは「個別事案」「重大な品質問題」で区別している。「個別事案」なら公表しないという判断になる。
 マクドナルドが公表した4件も「個別事案」だが、報道が先行したため公表した。しかし、個別事案でも公表による情報共有は広く業界に対する警鐘になり、結果的に再発防止につながる。
 食品への異物混入は当該企業だけの問題ではなく、食の安心安全全般への消費者の信頼を損ねることを肝に銘ずるべきだ。
 企業はネット時代も意識した方がいい。以前なら報道機関が取り上げなければ、異物混入が表面化することはなかっただろう。最近はネットへの画像投稿などをきっかけに情報が拡散し、企業が後追いする形で事実関係を認めざるを得なくなっている。
 企業にとっては「個別事案」だろうが、異物の入った食品を口にした消費者にとっては大ごとだ。企業の論理で公表を拒めば、消費者には隠蔽(いんぺい)と映りかねない。
 消費者も、企業も冷静に対応する必要もあろう。虫が混入していたとしてツイッターに画像投稿された人気カップ麺はブランド全商品の生産、販売を休止したが、過剰反応との指摘もある。商品回収、生産中止などの損失は、最終的には商品の値段に跳ね返りかねない。捨てるにはもったいない部分もあろう。
 全ての異物混入に関する情報を公開してこそ、消費者も冷静に向き合うことができよう。