<社説>佐賀知事選 安倍政権は民意受け止めよ


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 国政で1強状態の安倍政権にとって厳しい3連敗だろう。

 前職の国政転身に伴う佐賀県知事選は元総務省過疎対策室長の山口祥義(よしのり)氏が、前武雄市長の樋渡啓祐(ひわたしけいすけ)氏=自民、公明推薦=ら3人を破り初当選した。
 一部の自民党県議や、安倍政権の農協改革に反発する地元JAが山口氏を推し、保守支持層が分裂した。昨年7月の滋賀、同11月の沖縄両県知事選に続く政府与党の敗北だ。
 安倍政権は3知事選挙で示された民意を真摯(しんし)に受け止め、地域との信頼を回復するために謙虚な姿勢で政権運営すべきだ。
 地方分権の時代といわれて久しいが、今回の選挙は政府与党が地方選挙にてこ入れし、中央対地方の戦いの様相を呈した。自民党本部が推す樋渡氏陣営には菅義偉官房長官、谷垣禎一自民党幹事長ら政権幹部が次々と応援に駆け付けた。有権者の電話に安倍晋三首相の録音メッセージを流した。結果は「佐賀のことは佐賀で決める」と語った山口氏の勝利となった。
 昨年7月の滋賀県知事選挙は元民主党衆院議員の三日月大造氏が自公両党推薦の小鑓隆史(こやりたかし)氏を破って当選した。小鑓氏はアベノミクスを前面に出して中央とのパイプの太さを訴え、三日月氏は卒原発や琵琶湖環境を守ることを主張して真っ向から対立した。政府与党は最重要選挙と位置付けて、閣僚や党執行部を投入したのにもかかわらず敗北した。
 昨年11月の沖縄県知事選挙は、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設反対を掲げた前那覇市長の翁長雄志氏が、政府与党と共に移設を進める現職の仲井真弘多氏らを破り初当選した。
 3知事選に共通するのは、力ずくで地方をねじ伏せて中央主導の政策を遂行しようとする姿勢に、有権者が明確に反対した点だ。
 だが、安倍政権には残念ながら民意に耳を傾ける姿勢が見られない。民意が否定した辺野古移設を強行しようとしている。就任あいさつで上京した翁長知事に、安倍首相や菅官房長官らは会わなかった。サトウキビ交付金に関して上京した知事に西川公也農相も会わなかった。露骨なまでの冷遇だ。
 地方には地域住民の自己決定権がある。地方に対し強硬姿勢を続けている限り、安倍政権が進める地方創生は絵に描いた餅に終わってしまうだろう。