<社説>辺野古・安倍発言 負担軽減 本気なら県外を


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 安倍晋三首相が昨年秋から国会答弁や会見などで、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設によって沖縄の負担が軽減されるかのような主張をする場面が多くなった。辺野古移設反対を公約に掲げた翁長雄志氏が当選した11月の県知事選前後から顕著になっている。

 移設に反対する根強い県民世論をかわす狙いがあるのだろう。だが辺野古移設が負担軽減になるなどという論理はまやかしにすぎない。
 首相は負担軽減の理由として、垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの運用だけが移転されることと、外部から航空機を受け入れる機能がなく、普天間周辺の1万数千世帯で実施されている住宅防音工事がゼロになると主張している。
 辺野古にはオスプレイの運用だけにとどまらない施設が併設される。強襲揚陸艦の全長と同規模の長さ272メートルの護岸や揚陸艇の陸揚げが可能な斜路などの軍港機能や弾薬搭載区域も整備される。現在の普天間飛行場には軍港機能も弾薬搭載区域も存在しない。明らかに機能強化である。移設ではなく新基地建設にほかならない。
 運用がオスプレイだけとするのは、普天間から岩国基地にKC130空中給油機が移駐したことを強調したいがためだろう。しかし同給油機は移駐後も普天間で訓練を実施している。辺野古にも飛来すると考えるのが自然だ。負担軽減になることはない。
 住宅防音工事がゼロになると断言しているが、住宅地への騒音被害が皆無になるとでもいうのだろうか。防衛省は当初、辺野古の場周経路を周辺住宅地に近づかない台形と説明していた。しかし米側から「航空機が台形に飛べるはずがない」と訂正を求められ、楕円(だえん)形に広げた。しかも海上だけに経路を描き、陸上は飛行しないかのように説明する。普天間飛行場では場周経路をはみ出して住宅地を飛行している現状を見れば、住宅地の騒音がゼロになるはずがない。
 米国防総省は報告書で普天間代替施設について「運用年数は40年、耐用年数は200年の施設として設計されるべきだ」と記している。耐用年数200年の基地の建設がなぜ負担軽減になるのか。移設が「負担軽減」どころか「負担増大」になるのは明らかだ。首相が本気で負担軽減に取り組むのであれば、移設先は辺野古ではなく、県外を選ぶしか道はない。