<社説>こども園移行 受け皿、態勢双方の充実を


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 保育の受け皿確保は急務だが、単に受け入れ児童数の増加を図るだけでは不十分だ。子どもに目が行き届く保育態勢の充実も重要である。その両立に心を配りたい。

 那覇市が2016年度にも公立幼稚園の一部を認定こども園に移行する方針を固めた。将来は36の公立幼稚園の大部分を移行したい考えだ。4月に始まる「子ども子育て支援新制度」で国が認定こども園拡充を掲げたことを背景にした動きである。
 幼稚園は4~5歳児を受け入れるのが主だ。これに対し認定こども園は3~5歳児を受け入れる。1園につき20~25人の3歳児が見込まれ、公立の全園が移行すれば新たに720~900人の3歳児の受け皿ができることになる。
 効用はもう一つある。「新制度」では少人数の0~2歳児を預かる小規模保育を国の補助対象事業としている。卒園後の3歳児の受け皿となる「連携施設」の確保が条件だ。那覇市は認定こども園をその連携施設に位置付けることで、小規模保育への参入増加を見込んでいる。すると0~2歳児の待機児童減少も期待できることになる。
 待機児童解消は急務だ。県は潜在を含む本年度の県内待機児童数を1万8827人と推計する。那覇も15年度で2126人に及ぶ。
 「認可保育所の新設や分園設置だけでは間に合わない」(城間幹子那覇市長)のが現状だ。順番待ちでやきもきしている人の多さを考えれば、今回の措置による受け皿拡充の意義は大きい。中核市の試みだけに、効果が上がれば同様の問題を抱える県内の他の市町村にも波及するだろう。
 一方で心配な点もある。移行先の認定こども園は、公設公営だけでなく公設民営も想定している。県内の公立幼稚園教諭は非正規が半数に上る。民営化で非正規率がより高まるのではないか。
 幼稚園教諭と保育士の身分の安定は、子どもたちが安心して過ごせる環境の確保につながる。
 待機児童解消を図るには、県内で保育士が今より2262人増えないといけないと県は試算している。それを考えれば、保育士が減っては元も子もない。今回の措置が幼稚園教諭や保育士の待遇切り下げにつながらないような対策が必須であろう。
 例えば、認定こども園に対し何らかの措置をし、保育士の正規雇用を促すことが考えられる。きめの細かい対策を期待したい。