<社説>学校統廃合手引 存続模索する契機にしたい


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 文部科学省が公立小中学校の統廃合に関する手引案を公表した。1学年1学級以下となる小中学校を統廃合するかどうかの検討を自治体に求めた。

 文科省は手引案が一定の方向に誘導するものではないと説明している。県内の自治体は安易な効率化で統廃合に走ることなく、児童・生徒のより良い教育環境の確保を最優先にすべきだ。
 手引案は今月中に各教育委員会に通知される。文科省が1956年に標準学級数を12~18学級とした指針を出して以来、60年ぶりの見直しだ。
 文科省によると全国の公立学校のうち2012、13年度に計1080校が廃校になった。少子化による児童・生徒の減少や市町村合併が要因となっている。この20年で小中学校は約5千校減っている。手引案を出した背景には何の手も打たないまま小規模化が進むことを回避したいとの危機感があるようだ。
 県内の離島や過疎地域などでは1学年1学級以下となっている学校が存在している。いったん廃校にすれば、子を持つ家族は別の地域に移り住むことになる。そうすれば人口流出で過疎化が一層進み、地域共同体が崩壊する懸念がある。学校は教育機関という側面だけでなく、地域の核ともいえる重要な存在だ。
 手引案は統廃合の検討を求める一方で、存続させると判断した場合は情報通信技術(ICT)を活用した授業づくりも提示した。少人数で集団学習が難しい場合は他校との合同授業実施なども挙げている。
 統廃合で子どもが通わなくなった学校を即座に廃校とするのではなく、学校再開が可能となる休校にする議論も促している。
 一方で財政制度等審議会は昨年、報告書で歳出抑制の一環で学校の統廃合を進めることを主張している。財政健全化の側面だけで統廃合を議論するのは極めて短絡的だ。「東京目線から地方目線に発想を大きく変える」という安倍晋三首相の「地方創生」は名ばかりではないか。
 手引案によって統廃合へと加速するのではなく、存続できるための方策を地域全体で模索したい。小規模校を欠点と考えるのではなく、むしろ児童・生徒一人一人に教師の目が届くという利点と考え、自治体が学校存続と真剣に向き合う契機としたい。