<社説>外国人客急増 受け入れ環境の整備急げ


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 日本を訪れる外国人観光客が増大している。沖縄も急増しており、受け入れ環境の整備が急務だ。

 2014年に日本を訪れた外国人旅行者は推計1341万人で、過去最高だった13年を約300万人上回った。国・地域別では台湾(約283万人)が韓国(約276万人)に代わり1位となった。3位の中国(約241万人)の83%増も目立つ。
 一方、14年に沖縄を訪れた観光客は11月までの累計で650万人を超え、初の年間700万人突破が確実だが、うち海外客は82万8800人で、前年同期比61・1%増と大幅に増えている。
 外国人客増加は円安に加え、格安航空会社(LCC)の就航、昨年10月から消費税の免税対象が食品や化粧品などに拡大されたことなどが要因だ。沖縄の外国人客増では、航空路線拡充などでの官民挙げた取り組みが成果を挙げつつあるとも評価できるだろう。
 だがまだ課題は多い。那覇空港国際線旅客ターミナルや、那覇港クルーズ船ターミナルの運用開始も外国人客増に寄与したが、その国際線ビルは数年後には手狭になると既に指摘されている。
 今後も急拡大が予想されるアジア人観光客の需要を取り込むためには、拡張は待ったなしだ。クルーズ船バースも新たな大型船用の整備が検討されている。
 県の調査では外国人客の不満はハード面よりも、外国語対応や両替の利便性といったソフト面で強いとの結果も出ている。
 交通標識などをはじめ、空港や公共交通、観光地、公共施設などでの外国語の表示・案内、インターネットでの情報提供など徐々に整備は進んでいるが、肝心の人材育成を含め、急成長するアジアからの訪問者増大の速度にはどうも追い付いていないように見える。
 外国人客増に伴い、海外資本の県内投資も拡大しているが、外国人客増を沖縄経済の発展ともっと関連付けるような視点も必要だ。
 ウチナーンチュの「ホスピタリティー」が外国人客にいまひとつ伝わっていないとの気掛かりな声もある。リゾートやショッピング以外に、街並みや歴史・文化など素顔の沖縄の魅力が伝わる仕掛けがほしい。
 翁長県政はアジアの成長を取り込む経済戦略構想の策定に乗り出す。観光を柱にあらゆる産業の新展開が期待される。ぜひスピード感を持って取り組んでもらいたい。