<社説>悪質自転車運転 ルール順守し人命を守ろう


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 自転車は道路交通法で「軽車両」に区分されている。自動車と同様、「車両」の一種であり、道交法に定められた交通ルールの順守が求められる。悪質で危険な自転車運転によって交通事故の加害者、被害者になってはならない。

 改正道交法の施行令によって、悪質な自転車運転者に対する安全講習が義務化された。運転者が加害者となる深刻な事故を抑止することが狙いだ。
 施行令が定める「危険行為」は酒酔い運転、信号無視など14項目ある。携帯電話を使用しながら運転し、事故につながったケースなども安全運転義務違反として摘発の対象となり得る。
 交通ルールやマナーを無視した自転車の危険な運転は社会問題となっている。警察庁は2011年、自転車の危険運転の取り締まり強化を柱とした「自転車総合対策」をまとめた。
 道交法では車道通行が原則である自転車が高速で歩道を走り、歩行者にけがを負わせる事故が起きている。ブレーキのない競技用自転車もブームとなり、危険な公道通行が横行した。このような危険運転への対策は急務だ。
 通勤・通学で自転車は手軽かつ便利な移動手段である。スポーツや健康維持のために自転車を活用する人も多い。しかし、交通ルールに反した危険な運転によって、自転車が人命を脅かす凶器となることも忘れてはならない。
 自転車と歩行者、自転車単独、自転車同士の事故は13年、全国で8141件発生した。そのうち死亡事故は93件で、死亡事故の件数、割合は増加傾向にある。数千万円に上る高額の賠償金を加害者に求めるケースもある。
 県警の交通白書によると13年、自転車が絡んだ交通事故は県内で424件起きている。そのうち自転車側が過失割合の高い第一当事者となった事故は52件で、8人が重傷を負っている。
 わずかなミスが重大な事故につながる可能性があることを、自転車を利用する人は自覚すべきだ。自転車が軽快であるがゆえに交通ルールまで軽んじることがあってはならない。
 自転車による交通事故防止のため、自転車専用レーンの整備が全国で進んでいる。県内では名護市に整備された。運転者や歩行者の安全を確保する有効手段であるが、まずは順法精神と人命を守る気配りを自転車運転者に求めたい。