<社説>検証中の停止要求 辺野古民意 受け入れよ


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 沖縄の民意を背負った県知事による現段階での最低限の要求である。沖縄に向き合う安倍政権の姿勢を問う試金石と言えるだろう。

 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設に向け、沖縄防衛局が再開した海上工事について、翁長雄志知事は埋め立て承認の検証終了まで工事を進めないよう要求する。
 辺野古現地の状況が緊迫する中、工事停止は民意を踏まえた至極正当な要求である。安倍政権は直ちに受け入れるべきだ。
 昨年11月の県知事選で辺野古移設を推進した前職の仲井真弘多氏に10万票の大差をつけて圧勝した翁長氏の就任を受けて、安倍政権は移設作業を中止すべきだった。それは論をまたない。
 しかし、安倍政権は民意を無視し、遮二無二移設作業を進めている。上京した翁長知事に対し、安倍晋三首相、沖縄の基地負担軽減担当相である菅義偉官房長官も面談を拒み続け、冷たくあしらった。他府県相手ではあり得ない、沖縄だけに対する振る舞いだ。
 だが知事を含め沖縄社会は安倍政権の底意を見定めている。沖縄側を追い込む効果はまずない。
 強硬一辺倒な政権の姿勢は現場の海上保安官に悪しき影響を与え、人権侵害を帯びた力ずくの警備として具体化している。本紙が掲載した、船上の女性に馬乗りになって制圧しようとした海上保安官の写真は衝撃的で、読者から「許せない」「露骨な弾圧だ」という抗議の声が相次いで寄せられた。
 第11管区海上保安本部は「船体を通り抜けるためだった」との見解を示したが、連続写真を見る限り、女性のカメラを奪うため首に足を回して上から押さえ付けている。誰の目にもそう映るだろう。
 虚偽の説明をしてまで過剰警備を押し隠し、正当化する政権の姿勢に県民の反発は一層強まっている。国会議員と県議団を含め、反対行動への参加者が増えている。
 県民に危害が及ぶ事態を起こさぬため、翁長知事は第三者による埋め立て承認の検証チームの発足と合わせ、検証終了までの作業停止を要求する必要性に迫られた形でもある。
 翁長知事は、埋め立て承認の瑕(か)疵(し)の有無を検証する第三者チームの人選を急いでもらいたい。承認取り消しか撤回の判断に向けた検証を急ぎ、政権側に逆の圧力をかけていく戦略も欠かせない。