<社説>イスラム国人質 政府の「本気度」が問われる

 今は何よりも無事な解放を祈りたい。イスラム国の人質となった邦人2人は、殺害予告の期限とされた23日午後2時50分を過ぎても安否不明のままである。政府は引き続き救出に全力を挙げてほしい。

 今回の政府の対応を見ていると、本気で救出しようとしているのか、疑問なしとしない。
 人質の湯川遥菜さんが拘束されたのは昨年8月だ。後藤健二さんの家族の下に脅迫が届いたのは10月で、その時点で政府も把握したようである。
 安倍晋三首相は1月17日、エジプトでこう演説した。「(周辺国に)支援するのは、ISIL(アイシル=イスラム国の旧称)がもたらす脅威を少しでも食い止めるためだ。(中略)ISILと戦う周辺各国に総額2億ドル支援する」
 イスラム国が欧米人の人質の身代金として受け取るのは3億円前後という。だが今回、日本に対し要求したのは2億ドル(約235億円)だ。あえて、日本が各国への支援として表明したのと同じ金額だと言及している。首相の演説がイスラム国を刺激したのは間違いない。拘束を知りながらの演説だった以上、今回のような事態は予測できたのではないか。
 政府も昨年10月以降、水面下で交渉していたのかもしれない。それにしても首相の演説内容は不用意だったとの印象を否めない。
 人質殺害を予告し、身代金を求めるのは卑劣極まりない行為だ。このような卑劣な行為に「報酬」を与えてはいけない。
 だがそれと、人質解放のための交渉をしないこととは同じではない。この種の交渉は往々にして偽者の自称代理人が横行するから慎重を要するが、部族の指導者などから適切なパイプ役を至急確保し、少なくともまずは交渉期限延長を取り付けるべきだ。
 イラク戦争以降、中東でスンニ派は欧米から不公正な扱いを受けてきたと感ずる人が多いという。日本の支援は「イスラム国と戦う国」が対象と表明したから、やはり不公平と受け止められた可能性がある。それならスンニ派難民にも人道的支援を続けた国際赤十字への支援強化を打ち出すのも一案ではないか。
 その上で、日本は欧米各国と異なり、中東で銃弾の1発も撃ったことがなく、人道的支援しかしていないことを粘り強く訴えたい。人命は何より優先だ。そのための「本気度」が政府に問われている。



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