<社説>原発15~20% 教訓忘れ震災前に戻るのか


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 まるで何事もなかったかのように震災前へ戻ろうとする動きが加速しているように見える。

 エネルギー政策の柱とする2030年の電源構成で焦点となっている原発の比率に関し、政府は15~20%を軸に検討する方向だ。
 震災前の原発比率28・6%より低くなるとはいえ、いまだに「重要なベースロード電源」と位置付け、原発にしがみつくことは未曽有の原発事故を経験した国として許されない。福島県ではいまも12万人以上が避難し、震災関連死は直接死を上回る1800人近くに上る。
 太陽光、風力など再生可能エネルギーを普及させる道を模索し、脱原発にかじを切るべきだ。
 政府は昨年4月、エネルギー基本計画を閣議決定し、民主党政権が掲げた「原発ゼロ」と決別した。その時に先送りした電源構成を検討する有識者委員会の初会合を今月30日に開き、議論を本格化させる。
 政府内では6月のドイツ・サミットまでに結論を出したい考えだ。原発と再生エネ(水力を含む)を合わせ「45%程度」は温室効果ガスをほとんど出さない電源とアピールしたいようだが、「温室効果ガス」を隠れみのにして原発回帰を推し進める思惑が透けて見える。
 しかし、それならば再生エネの導入機運を後退させるのではなく、原発こそゼロに近づけるべきだ。
 電源構成比率の策定に必要な発電コストの試算も示すというが、原発が「コストが安い」という神話は過去のものだ。うそで塗り固められていたといえよう。
 廃炉、事故が起きた場合の補償、最終処分など原発のコストは膨らむばかりだ。
 エネルギー調査機関として実績のある米国企業系「ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス」の試算では、1キロワット時当たり原発は約15円で太陽光発電とほぼ同レベル、陸上風力発電と比べるとかなり高いという結果が出た。
 これまで指摘されてきた点を含め国民の前に、試算を示すべきだ。
 昨年12月の衆院選で安倍政権は勝利し、原発再稼働も理解が得られたとして原発回帰に前のめりだが、白紙委任したわけではない。世論調査を見ると、原発再稼働に国民の大半は反対している。民意無視は許されない。
 有識者委員会の議論を徹底的に公開し、国民の意見を聞き、将来の電源構成を示すべきだ。